環境問題は21世紀の課題であります。資源の循環や環境保護に世界中が目を向けています。誰しもが生活環境を見直し、リサイクル活動に一歩踏み出す時であると認識しています。
インド東部にあるリサイクルの現場。そこである家族に出会いました。家の周辺にはたくさんのビニール袋が散乱しています。この家族の仕事はリサイクル作業。 家族みなでビニール袋を一枚一枚確認しながら分別していきます。
リサイクルへのはじめの一歩がここにありました。家族全員がその一歩を担っていました。仕事内容は早朝から夕方まで家族全員でビニール袋を分別していくこと。ここには街の全域から再利用できるビニールと汚れで再生できないものが混在状態で運ばれてきます。そのビニールを積み上げた山をいくつも作り、分別小屋の中で丁寧にほどき仕分けしていました。
分別の仕事中、ゆりかごに揺れる赤ちゃんは、母親の脇で見守られていました。子供たちがまだ幼い中、家族、親族でリサイクルの仕事で暮らしていきます。
インドの平均月収は約25000円、平均月収よりも半分以下の収入がこのリサイクル作業の現状でありました。母親はこう語っていました。「家族を養っていくことは大変です。親族や地域の方々とのつながり、そして何事も分け合って日々暮らしています。」
ビニール分別する仕事場には寝床もあり、手作りのベッドが備え付けられていました。生活環境は厳しく、猛暑の季節は汚臭が漂い、冬の季節は寒さに震える。衛生面にも不安がよぎります。
この一帯はリサイクル物資の集積場所となっており、この家族に限らず住民の方それぞれがリサイクル物資の山に沿うように家屋を建て暮らしていました。扱う品物もビニールだけでなくプラスチックや再生紙、さらには金属類も分別していました。
母親は言います。「子供たちに学校へ行かせてあげたい。学ぶことができれば子供たちが自分で仕事を探し、選ぶことができる。そんな子供たちの将来を見据えた環境を作ってあげたい。」
世界の中で高度経済成長が際立つインドの中であっても、環境が厳しき現実を突きつけていました。それでも家族みなで力を合わせて子供たちを育てていました。インドでも家族が力でした。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…