日本から飛行機で約16時間、中東にあるヨルダンという国でパレスティナ難民の家族と生活をともにした。お父さんであるモハメッドさんは50歳、タクシーの運転手として家族を支える。生活は山の斜面に乱立する日本のアパートを思わせる3Kの集合住宅、築30年以上たつ5階建てのアパートに7人で暮らしていた。
今日はイスラム教の休日である金曜日、お父さんにとってこの日は大きな喜びの一日である。それはお孫さんの存在。娘夫婦が一歳のお孫さんをつれて実家にやってくることが毎週金曜日の恒例であり、孫の顔を見ることがお父さんにとって何よりもうれしい時間であった。
イスラム教徒の方々は休日である金曜日は仕事を休んで家族と時間を過ごすことが大切な習慣である。家族一同がお父さんのうちに集まって、みなでごちそうを楽しむ。リビングでは6人の子供を育てるお母さんの作るパレスティナの伝統料理マグルーバをいまかいまかと子供たちは待ちわびていた。マグルーバとはスパイスをきかせたパレスティナ版炊き込みご飯のうえに蒸したチキンをぶつ切りにしてのせた休日ならではのごちそうである。
子供たちが食器やグラスをリビングに運び込み、小さな一歳のお孫さんまでも皆をまねて食器を運んでいる。
イスラム教徒であるお父さんたちは、食事の前にみなでモスクというイスラム寺院で礼拝をすませてきていた。パレスティナの家族にとって日々の礼拝は生活の根幹であり一日5回の礼拝を繰り返していた。
イスラム式の食事方法は男性と女性が別々の部屋で食事をする。さらに宗教の決まりで豚肉やお酒を口にしてはいけない。お父さんを中心に息子たちが食事を楽しむ。末っ子の学校のこと、窓ガラス会社に就職したばかりの三男のこと、息子たちの話に耳を傾けながらお父さんはマグルーバを楽しんでいる。
食後はお孫さんと歌ったり踊ったり、笑い声が絶えない一日が続いていった。
お父さんはこう語る。「何が幸せかって?それは家族みんなでいることだよ。」大声でお父さんは笑っていました。
衝突が続くパレスティナの故郷を離れながらも家族がいつも一緒に時間を過ごしていく。みなで力をあわせて暮らしていく。一つ屋根の下、パレスティナでも家族の時間はみな同じあたたかいものだった。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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