わずか23年で崩壊した香港の一国二制度
1997年7月1日にイギリスから中国側に返還された香港。そこからの50年は香港の高度なる自治を認める一国二制度を保証する返還規約が含まれていましたが、2020年7月1日返還からわずか23年で中国中央政府による香港行政への介入を認める国家安全維持法が可決・成立・施行されました。これまで香港民主化の象徴であった一国二制度は中国中央政府の直接介入を防ぎ、香港人による香港のための高度なる香港自治を保障してきました。自由と民主主義が生活慣習に根付き、世界的な金融都市として絶対的な自由経済を世界に披露してきました。
中国中央政府による香港司法への介入
中国中央政府による香港強制介入のきっかけは、昨年の6月香港立法府(議会)において逃亡犯条令改正案が進められたことにあります。この改正案の中身は香港での刑事事件容疑者を中国本土に引き渡すことを認める内容となっており、それは一国二制度であるはずの香港が中国中央政府による司法介入を容認することを意味していました。香港立法府の議員構成は選挙構造上、親中国派議員が多数を占めており、議会進行そのものが中国寄りであると以前から非難の声は上がっていました。
自由を求める香港市民デモ隊と治安部隊の武力衝突
香港を拠点とする民主派組織や若者たちによる民主派連合の団体は、即座に逃亡犯条例改正案拒否を掲げ抗議デモを展開。中国政府の息がかかった香港政府に対し若者から高齢者まで参加者が200万人を超える大規模抗議デモに発展しました。自由を求める香港市民に対し香港警察は暴力を使ってデモを制圧。多数の負傷者を出したことがさらなる香港市民の怒りを刺激し衝突が急拡大。デモ隊と治安部隊の武力衝突が各国のメディアによって連日世界中に配信されました。
外国人に対しても強制力をもつ国家安全維持法
国家安全維持法による中国中央政府の影響力は、香港市民への圧力だけでなく反政府の立場で香港行政に関わろうとする外国人に対しても強制力を保ちます。諸外国からの反発の立場が確認されると、中国への出入国拒否や中国・香港領内での拘束も想定されます。これまで繰り返されてきた反中国政府を掲げる民主派組織による抗議運動は今後強制的に押さえ込まれます。令状なしの調査やインターネットプロバイダーへの政府介入、国家反逆に関わる容疑者の出国禁止など法律の拘束力は恣意的に広げることができます。民主派の声は風前の灯。香港が中国中央政府に飲み込まれる一国一制度の強制力が始まりました。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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