アルメニアとアゼルバイジャン 停戦に合意するも…
黒海とカスピ海の間に位置し、南カフカスの雄大な自然が広がるアルメニアとアゼルバイジャン。そのアゼルバイジャン領内にあるナゴルノ・カラバフ自治州でアルメニア軍とアゼルバイジャン軍が衝突。多数の戦闘員・民間人が犠牲となりました。欧州安保協力機構(OSCE)の仲介で停戦に合意するも予断の許さない状況が続くと想定されます。アゼルバイジャン領内にあるナゴルノ・カラバフ自治州は、キリスト教系アルメニア正教を信仰するアルメニア人居住者が多数を占めており、現地にはアルメニア軍が駐留。両国ともに旧ソ連圏にありながら1991年のソ連崩壊後、イスラム教徒が多数を占めるアゼルバイジャンからナゴルノ・カラバフ自治州のアルメニアへの分離併合・独立運動が激化し、これまで何度も交戦が繰り返されてきました。1994年に両国は停戦合意を結ぶも局地的な衝突が依然続いていました。
アゼルバイジャンへの軍事支援を掲げたトルコ
ここ数年アゼルバイジャンは豊富な天然資源開発を進め、周辺国との石油外交で存在力をアピール。国家運営は急成長の経済力を背景に紛争とは程遠い環境にあるはずですが、旧ソ連構成国の性と言える強権体制や国営企業を主軸とした経済基盤など民主派のうねりとは真逆の政治構造が一部残っており、利権をめぐる周辺国の介入が代理戦争の様相を呈しています。その中でも今回の紛争で我先にアゼルバイジャンへの軍事支援を掲げたトルコの立ち位置に注視が必要です。トルコとアゼルバイジャンは民族系譜の繋がりやイスラム教としての思想基盤(トルコはイスラム教スンニ派・アゼルバイジャンはシーア派が多数)、そして石油パイプラインで繋がる政教一致型とも言える外交政策を共有してきました。さらに歴史上では第一次世界大戦時、当時のオスマン帝国(現トルコの前身)の敵対国であったロシアと連帯を組んでいたアルメニア人の大量虐殺事件を引き起こし、その責務を国際世論に問われてきた背景もアゼルバイジャンとの繋がりを強固にしてきました。
アルメニア支援のロシア、フランス
一方、アルメニアはロシアと集団安全保障条約を結んでいます。非常時の軍事支援の後ろ盾をもち、さらに移住したアルメニア系住民を多数かかえるフランスがアルメニア支援の立場で停戦を呼びかけています。
旧ソ連圏の国々では、かつてのソ連型国営主義派と民主派組織による衝突が相次いでいます。ウクライナ、ベラルーシ、さらにキルギスでも不穏な動きが際立っています。代理戦争、周辺国との軋轢、資源をめぐる衝突、そして宗教の壁、紛争の火種は世界中で燻り続けています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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