ミャンマー国軍総司令部による反政府抗議デモの武力弾圧。実弾を使った制圧現場では一般市民が犠牲となり死者数は少なくとも38名を超えました。国民が全土で軍事政権復興への抗議を訴えハンガーストライキに突入。ミンアウンフライン総司令官は世界各国からの非難声明を遮断、内政不干渉を掲げゼネストへの徹底弾圧を宣言しました。軍事政権の後ろ盾となっている中国やロシアは静観、軍事政権再興という歴史の逆行が起きようとしています。
ミャンマーは、東南アジア最後のフロンティアと呼ばれるほど約半世紀の軍事政権下、諸外国との繋がりが閉ざされてきました。民主派のうねりが拡大する過程で、各国との門戸を段階的に解放。ここ数年で急激な産業開発が続き、世界各国の企業がミャンマーに進出。日本からも多数の企業が参入すると産業拡張はさらに加速。都市部には日本のホテルや日本食のレストランなど、地域によっては日本人街の兆しが出るほど信頼関係が深まっていました。国民の約9割が敬虔な仏教徒であり、街のいたるところにパゴダと呼ばれる仏教寺院が点在、多数の市民が一日に何度も参拝に足を向けます。反面、多民族国家ゆえの民族衝突も続いており、タイ国境やバングラデシュ国境での少数民族問題の解消は民主派運動に込められた願いでもあります。民主化の象徴アウンサンスーチー氏は昨年の総選挙での民主派大勝をへて、ミャンマーの舵取りを自由と公正を主軸にした国民主権の政治指針を掲げてきました。そして今年2月の新政権への移行・発足の直前、突如ミャンマー国軍が選挙不正やスーチー氏の密輸入疑惑、新型コロナウイルス感染対策不備などの理由を突きつけ、新政権の誕生を拒否。軍事クーデターに踏み切り強制的に政権を奪取、スーチー氏を含む民主派関係者を逮捕、軟禁下におきました。武力を使った強引な抑圧には、一部の国軍兵士、警察関係者、外交官から非難声明が出されるも、軍部の中枢である国軍総司令部によって敵対行為の関係者は拘束されてしまいました。手段を選ばない強硬な制圧はまさに軍事政権そのものを体現しています。
ミャンマー情勢に重なる反政府運動は数年前から隣国のタイでも発生。タイ国軍による軍事クーデターは治安の安定を大義に暴走。民主政治を求めるタイ国民が暫定軍事政権と衝突し多数の死者を出しながらも軍部が政権中枢を掌握。軍関係者優位の不公平な選挙を経て事実上の軍事政権が誕生しました。反体制派は次々と逮捕され、政治団体は解党命令を受け消滅。反政府運動は監視下におかれました。タイの暴動では諸外国による監視体制、オープンな報道の力が求められました。ミャンマーのSOSを世界各国が受け止めることができるのか、注視が必要です。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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