2001年9月11日、アメリカ・ニューヨーク・ワールドトレードセンター爆破テロ事件を引き起こした国際テロ組織アルカイダ。事件の黒幕とされる最高指導者オサマ・ビン・ラディンはジハード(イスラム聖戦)を掲げアメリカ本土を攻撃。当時のアメリカ・ブッシュ大統領は徹底報復を宣言し、オサマ・ビン・ラディンをかくまっていたアフガニスタンのタリバーン政権に宣戦布告。アフガニスタン紛争に突入しました。この事件から約10年を迎えた2011年5月2日、パキスタンのアボタバードに潜伏していたオサマ・ビン・ラディンがアメリカ軍特殊部隊の急襲によって殺害されました。
あれから約10年、今度はアメリカ・バイデン新大統領が2021年9月までにアフガニスタン駐留のアメリカ軍を完全撤退させることを発表。9・11から約20年を経て、対テロ戦争を掲げてきたアメリカの軍事外交戦略が大きく舵を切ることになります。
トランプ元大統領時代には、中東のシリアやイラクからの駐留アメリカ軍の撤退を進め、アフガニスタンでは敵対関係にあるイスラム組織タリバーンとの和平交渉を進展させました。交渉条件は過激派によるテロ攻撃の停止を約束する代わりに駐留アメリカ軍を撤退させること。実際にこの数年の間で世界規模でアメリカ軍の撤退が進んできました。その過程で世界各国が自国内はもちろん、周辺国との有事に対応する責務を再認識し始めています。特に情勢が不安定な中東地域やアフガニスタンでは、アメリカ軍撤退による力の空白が生まれ過激派や武装集団が乱立することは容易に想定できます。アメリカ軍の段階的撤退がすでに始まっているアフガニスタンでは、タリバーン、過激派イスラム国、地域に根付いた武装組織が群雄割拠の状態となり、テロ攻撃が拡大。過激派組織各々が存在力を競い合うかのように襲撃事件を引き起こしています。
トランプ元大統領によるアメリカファーストから多様性を掲げるバイデン新政権にシフトしたアメリカ。外交の動きを見る限り、決して融和路線を基軸とするのではなく、仮想敵国を明確にした地域同盟を組み立てる特徴が見て取れます。ブッシュ、オバマ、トランプ、バイデン大統領の流れの中で、対テロ戦争が始まり、戦いの明確な終焉を迎えることなくアメリカ軍の撤退を進めている現実は、敵対勢力が流動的に細分化しすぎてしまい、誰が敵で誰が味方なのか掴みづらくなっている現状があります。敵の見えない戦争の時代に突入したのかもしれません。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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