パレスチナ自治区ガザ空爆

2021年5月に勃発したイスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを拠点とするイスラム武装組織ハマスの軍事衝突。現時点では停戦状態に落ち着きを見せつつも依然局地的な衝突が続いています。戦闘の要因はパレスチナ住民が暮らす地域へのユダヤ人入植作業の拡張、さらに入植問題に関わる法的な規制を段階的に排除していく方針にパレスチナ側が反発。このうねりに前後してパレスチナの若者がユダヤ人を暴行する映像が流出、さらにその報復とも取れるユダヤ強硬派によるパレスチナ人暴行映像が確認され報復の連鎖にスイッチが入りました。大規模衝突直前にはイスラム教の断食月ラマダン期間の最後の合同礼拝が東エルサレム・旧市街にあるイスラム教の聖地の一つアルアクサーモスクで行われた折イスラエル軍の治安部隊と礼拝参加者が衝突、多数の犠牲者が出る事態となりました。

中東問題の核と言えるパレスチナ問題。そのルーツを細かく紐解いていくと旧約聖書の時代に遡ってしまいますが、端的な事象は第二次世界大戦後の1948年、アラブ人が多数暮らしていたパレスチナの土地にユダヤ人国家であるイスラエルが建国されたことにパレスチナ問題の核を見ることができます。第二次大戦の混乱の中、世界各国で多数のユダヤ人が虐殺されたことを受け国連はユダヤ人国家建国を決議。パレスチナの地にユダヤ人国家とアラブ人国家の2国家共存の政策を発表しました。パレスチナ一帯はユダヤ人にとっては元々ユダヤ人の王国が存在していた土地であり、アラブ人にとっても長きに渡り居住してきた祖国の土地。特に聖地エルサレムを巡ってはユダヤ教の聖地である嘆きの壁、イスラム教の聖地である岩のドームやアルアクサーモスク、キリスト教の聖地である聖墳墓教会が寄り添っており、双方にとって国家の首都として外すことができない場所。それゆえ国連決議では聖地エルサレムに関しては国際管理下に置き、その帰属を双方に認めないことを決定していました。イスラエル建国はパレスチナのアラブ人だけでなく周辺のイスラム国家を刺激し、建国宣言と同時に即座にアラブ諸国がイスラエルに宣戦布告、第一次中東戦争が勃発しました。結果は聖地エルサレム旧市街を含む東エルサレムをヨルダンが西エルサレムをイスラエルが、南部ガザ地区はエジプトが管理することに決まりました。その後の1967年には第三次中東戦争が始まり、圧倒的な武力を持つイスラエルが周辺アラブ諸国を駆逐。東エルサレム、エルサレム旧市街、ガザ地区などを支配領域に取り込みました。聖地や領土、民族、宗教が絡み合ったパレスチナ問題。今回の大規模軍事衝突は、構造上これまで繰り返されてきた中東戦争の延長線上にあり双方が停戦合意を掲げても、パレスチナ問題の解決とは程遠い状況であることを注視しておく必要があります。