2021年8月15日イスラム組織タリバーンがアフガニスタンを制圧しました。タリバーンによる厳格な国家運営はイスラム主義に沿った舵取りを強め、自由や国民主権の保障は壊滅。タリバーン報道官が世界に発信する融和路線との乖離は明白で、世界各国に求めるアフガニスタン・イスラム首長国の国家承認も棚上げの状態となっています。
タリバーンとのつながりが深い湾岸国家のカタールや経済回廊を目指す中国、隣国のパキスタンがタリバーン政権の承認に踏み込むも多くの国々は警戒の予防線を保っています。
タリバーンが重んじるイスラム思想の源流はコーランを忠実に遵守し、イスラム首長国を完全樹立させること。イスラム教義の裁量は全てタリバーンが判断し、反イスラムや反タリバーンのうねりは一切認めず厳罰を突きつける恐怖体制を構築しています。かつて1996年から2001年まで存在した旧タリバーン政権。当時から非難の声が上がっていた女性や子供たちの人権抑圧、自由な教育環境の否定、音楽やファッションなど欧米文化の廃止、国民の暮らしを監視下に置くなど政権崩壊の土台となった恐怖政治を繰り返さないと報道官は頻繁に発信してきました。
ただ現実的に抑圧を知る国民がタリバーンを信じることはありません。タリバーン暫定政権の閣僚の顔ぶれを見ると、旧タリバーン政権の指導者たちがポストを独占。世界各国からテロリスト指名手配を受けている人物が顔を揃え、新たな政権運営を担うこと自体がブラックジョークに見えてしまうほど自由や融和とはかけ離れた閣僚人事が発表されました。
アフガニスタンでのタリバーン暫定政権の権限が強化されていくと、今後世界各国のイスラム主義思想を強める過激派や武装組織の温床になる懸念が高まります。かつてアメリカ・ニューヨーク9・11事件を引き起こした国際テロ組織アルカイダや過激派イスラム国、さらに地域や部族に根付いた武装勢力がアフガニスタンを拠点に武装連帯を強めていくことが想定されます。タリバーンは日本に対しても医療や教育支援などこれまでの繋がりを大切にするメッセージを発表していますが、敵対行為があれば容赦無く攻撃に入ることは容易に想定されます。タリバーンへの警戒が世界各国で共有される時を迎えています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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