アフガニスタンの全権を掌握したイスラム主義組織タリバーン。厳格なイスラム思想を掲げるアフガニスタン・イスラム首長国の完全樹立を目指し、世界各国との外交戦術を積極的に展開。国家承認や政権運営に関わる資金調達を交渉軸に置き、タリバーンと友好関係にあるカタールや中国、ロシアとのパイプを構築。天敵であったアメリカ政府とも交渉窓口を拡げました。イスラム主義国家として政権を牽引するタリバーンの政治構造を紐解くと、その中身な旧タリバーン政権幹部が全閣僚を独占しており1996年から2001まで続いた旧タリバーン政権の強硬なイスラム慣習の復活は不可避といえます。いかなる理由であれ諸外国との関わりを持った国民を洗い出し、刑罰を課すことで密告監視体制を強要。これまでの自由な思想や民主的な国民主権の考え方は壊滅しました。
さらにタリバーンが政権を担うことの一番の懸念は、アフガニスタンが過激派の温床となりテロリストが世界各国に拡散する危険性であります。これまでアフガニスタンではタリバーンや国際テロ組織アルカイダ、隣国パキスタンを拠点とするパキスタン・タリバーン運動などイスラム原理主義を基盤とする武装組織が連帯を組み、反政府テロ事件や駐留外国軍部隊への襲撃を繰り返してきました。特に2014年中東シリア領内で建国宣言を行った過激派イスラム国の分派組織でありアフガニスタン地域の旧名ホラサンを名乗るイスラム国ホラサン(IS-K)がタリバーン政権を狙った大規模テロ事件を引き起こしており、過激派が絡み合う内戦の様相を呈しています。タリバーンといえど内部の統治体制は決して一枚岩ではなく融和路線を掲げる勢力、徹底したイスラム戦線を主張する集団が絡み合っておりイスラム思想そのものにも裁量のばらつきがあります。タリバーン内部の強硬派の若者たちが過激派イスラム国ホラサンに流入している証跡もあり、同じイスラム教徒同士でも立ち位置の温度差で衝突が連鎖していることが確認できます。国土の約4分の3が山岳地帯に覆われているアフガニスタン。地方の暮らしは農業に従事する自給自足の暮らしがほとんどです。過酷な自然環境に向き合い地に足のついた暮らしを送る国民の多くは敬虔なイスラム教徒の方々。安心した暮らしを支える政権であれば、タリバーンであれ、旧政権であれ受け入れざる得ない状況であります。アフガニスタンの平和を誰しもが願ってやみません。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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