激動のウクライナ情勢。2022年2月24日、ロシア軍がウクライナへの軍事侵攻を開始しました。約19万の大規模部隊がウクライナ国境地域に展開。電光石火の越境攻撃でウクライナ政府軍の80以上の軍事施設、一部空港を破壊し制空権を確保しました。1986年に大事故を引き起こしたチェルノブイリ原発までも制圧。ウクライナ北部ベラルーシ軍との軍事演習を大義にロシア軍を集結させていたプーチン大統領は攻撃体制が整った段階で軍事侵攻に踏み切りました。ウクライナ侵攻の狙いはウクライナの非武装化、南部クリミア半島のロシア主権承認、東部ドネツク・ルガンスク人民共和国の国家承認、ウクライナ西部国境地帯に展開する北大西洋条約機構(NATO)の軍事兵力撤去などロシアの安全保障体制の強化が柱にあり、この要求は同時にウクライナ占領を意味しています。欧米に傾くウクライナのゼレンスキー政権を排除し、ロシア主導の国家統治体制構築が最終的な軍事目標と言えます。核兵器保有を前面に掲げるロシアの強硬な姿勢に対し、アメリカ政府主導の北大西洋条約機構(NATO)は現時点で兵力を直接ウクライナ領内に派遣していません。NATOの部隊がウクライナ支援でロシア軍と直接戦闘を行うことは欧州全体を巻き込んだ第三次世界大戦に発展する可能性が高く、経済制裁を徹底させることでプーチン政権への圧力を強める戦術を選びました。
すでに民間人の犠牲者が拡大しており、ロシアとウクライナの停戦協議では犠牲者回避のための人道避難回廊の設置を合意しました。これまでに住民の一部が退避を開始していますが、肝心の避難経路の中身は6本の避難回廊のうち4本はロシア・ベラルーシ行き、2本がウクライナ国内での避難移動となっており、ウクライナ国民にとって敵国側への避難先が示されたことに不信感が強まっています。避難時期と回廊周辺での戦闘は一時的に休戦が約束され、国際支援団体による救援物資の補給が進められています。ウクライナ危機での避難者はすでに200万人以上。ウクライナの人口は約4400万人で18歳から60歳までの男性はウクライナ領内に留まることをウクライナ政府は発令しました。21世紀の現代において侵略戦争が勃発したことに世界が衝撃を受け、暴走するロシアのプーチン大統領を止めるべく各国の指導者が停戦に向けた直接交渉を続けています。戦争の犠牲者はいつも子供たち。これがどの戦争でも変わらない現実であります。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…