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2022年08月12日

ウクライナ戦争の影響

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ウクライナ戦争が世界の食糧問題を揺さぶっています。パンのゆりかごとも呼ばれるウクライナの豊かな大地は小麦、とうもろこし、ひまわり油、サトウキビなど膨大な食品原料を世界各国に産出してきました。今年2月24日のロシア軍事侵攻により、輸出拠点であったウクライナ南部黒海沿岸の港湾施設がロシア軍によって軍事占拠され、輸送タンカーの安全な航行が阻害される事態が発生。ウクライナ産穀物の輸出が遮断されたことで世界食糧危機が現実となりました。開戦から約5ヶ月半後、ウクライナ、ロシア、トルコ、国連代表団による食料問題回避のための四者協議大枠合意で輸出の再開と航行の安全保障を確約、すでに南部のオデッサ港からトウモロコシの輸出が再開されウクライナ産の穀物輸入に頼る中東、アフリカ諸国への流通が緩やかに繋がり始めています。特に小麦産業に関しては世界全体での小麦総輸出量の10%をウクライナ、20%をロシアが担っており、両国からの小麦輸入に頼る中東、アフリカ諸国では小麦の流通経路遮断の影響で国内におけるパンの販売価格が急騰。生活不安のうねりが反政府抗議運動に拡大する懸念が高まっています。食糧危機に関してはかつて北東アフリカのスーダンでパンの価格高騰が政権崩壊のスイッチの一つとなった経緯があり、各国の食糧体制の見直しが急がれています。

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ウクライナ戦争は同時に、エネルギー外交圧力も加速させました。欧州諸国はこれまでロシアの石油・天然ガスに依存してきたことで、ロシアからのエネルギー輸出遮断戦略に屈せざる得ない現実を突きつけられました。日本も同様でこれまでロシアに頼ってきた液化天然ガス(LNG)の輸入契約に不穏な流れが浮上。プーチン大統領は日本列島北部にあるサハリンで産出される液化天然ガス精製拠点であるサハリン2の多国籍経営権を、ロシア国営企業に移転させる方針を発表しました。日本の企業が共同出資するサハリン2を強制的にロシア管轄の企業が保有するという契約を無視した強硬策に日本企業は迅速な対応を迫られています。これはロシア軍事侵攻に反発した日本政府に対するエネルギー報復外交であります。これまでサハリン2で精製されるLNGの約60%を日本が輸入してきました。ウクライナ戦争によって低コスト、安全な航行、日本近郊という立地の安定性など日本が享受してきたエネルギー産業の根幹の見直しが迫られています。ウクライナ情勢の影響が日本にも直結してきています。

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渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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