昨年10月7日に勃発したガザ軍事侵攻。戦闘は5ヶ月以上続きガザ領内だけで3万人以上の犠牲者が確認されました。イスラエル軍は今後最南部ラファ地上侵攻に踏み切り、ガザ全域を軍事管理下に置くことを発表しています。現時点でラファ一帯には約140万人の避難者が殺到しており、地上侵攻に踏み切った場合、膨大な数の犠牲者が出ることへの懸念が高まっています。
これまで繰り返された戦闘停止協議は事実上断絶しており、イスラム組織ハマスが掲げる休戦協議の条件である緊急支援物資の搬入とイスラエル軍ガザ撤退に対しイスラエルのネタニヤフ首相は要求を全て遮断しました。イスラエル軍はラファ地区の避難者のなかに5000人以上のハマス戦闘員が潜伏していると主張。人質完全解放にはハマス壊滅が不可欠として戦闘の拡大を突きつけています。さらにイスラエル政府はガザ軍事制圧後の管理体制について過激派との繋がりのない地元当局の行政管理を提示しガザ地域でのイスラエル軍事統制を維持することも発表しました。軍事侵攻に対する反イスラエル組織の連帯を遮断させる狙いが指摘されています。
パレスチナ自治区トップのアッバス議長は、将来的にパレスチナ国家の樹立とイスラエルとの二国家共存を模索してきました。イスラエル側は今回の軍事侵攻により、今後もパレスチナ国家樹立を認めずにイスラエル管理下での治安体制が維持されていくことを発表しています。このメッセージはパレスチナ地域だけでなくアラブ諸国の過激派を刺激することが想定され、中東一帯への戦闘拡大は避けられません。
民間人の犠牲を抑えるための人道的な即時停戦を掲げた国連安全保障理事会の決議案には、アメリカが拒否権を発動。15カ国の決議参加国のうち13カ国は停戦に賛成したものの、イギリスは決議を棄権。アメリカの拒否権は今回で4度目となっています。アメリカのバイデン大統領は中東カタールとエジプトの仲介で新たに6週間の戦闘休止と人質の解放交渉を再提示するも、実際はイスラエル軍事侵攻を支持していることに世界各国から非難の声が上がっています。
この5ヶ月でイスラエル軍によるガザ国境管理が強化され、ガザ市民唯一のライフラインであるエジプト側からの支援物資はイスラエル軍の強硬な検問で制限されました。ガザ地区の人口230万人のうち、4分の1にあたる58万人が現在深刻な飢餓状態に直面しています。ガザ軍事侵攻の残虐性が剥き出しとなってきています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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