イスラエルガザ軍事侵攻が周辺国に連鎖しています。イスラエル北側隣国レバノン拠点のイスラム教シーア派武装組織ヒズボラがイスラエル占領下ゴラン高原にあるサッカー場をミサイル攻撃。犠牲者は子供を含め少なくとも12名。イスラエル軍は報復攻撃でヒズボラの軍事拠点を爆撃。さらに首都ベイルートへのミサイル攻撃に踏み切りました。ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師が徹底抗戦を宣告したことで双方のミサイル・ドローン攻撃が激化。イスラエル政府はヒズボラへの軍事作戦承認を発表しました。イスラエルとヒズボラは2006年にも軍事衝突を起こし多数の市民が犠牲となっています。
さらにイスラム組織ハマスへの連帯を掲げるイランの動向に大規模軍事衝突の懸念が高まっています。約19年ぶりに国政改革派ペゼシュキアン氏が新大統領に就任したことでこれまでイランが抱えてきた核合意問題や経済制裁解除に向けた対話路線外交に期待が広がっています。ペゼシュキアン新大統領が選挙期間から掲げてきた正義と公正の政治公約をイランの若者層が支持。保守強硬派優位の選挙戦を勝ち抜いてきました。しかしイランへの光明が灯った瞬間、大統領就任式典に参列していたイスラム組織ハマスの政治部門最高幹部イスマイル・ハニヤ氏が首都テヘランの邸宅で殺害される事件が発生。要人をイラン領内で殺害される屈辱にハメネイ最高指導者は激怒し血の制裁を加えることを発表しました。現時点においてイスラエル側は殺害関与に触れておらずイラン政府は警護関係者の通信記録を洗いだしています。
ガザ軍事侵攻を巡ってはハマスを軍事支援するイランに対しイスラエル軍が今年4月ミサイル攻撃を強行したことで一線を越える軍事衝突の危険が高まりました。イラン側は経済制裁による国内情勢の疲弊を回避することが至上命題であり、形式上のドローン攻撃を繰り返し最終的に外交交渉による軍事衝突回避の道を選んできました。ただ今回のハニヤ氏殺害事件はイラン革命防衛隊の厳重な警備体制の中で行われた暗殺事件であり、イスラム教シーア派の雄であるイランの面子を踏み躙る結果となりました。イラン側がこの状況で報復攻撃に踏み込まないのであればイスラム教国としての誇りを自ら捨てたと判断されます。対話路線のペゼシュキアン新大統領の融和路線を封じ込め宗教指導者主導の報復攻撃に踏み込む可能性が高まっています。イスラエル軍はすでにハマス越境攻撃の首謀者であるカッサム旅団最高指導者ムハマンド・デイフ氏を殺害しました。イスラエル軍によるハマス統治機能破壊工作としてハニヤ氏の後継者となったガザ地区軍事部門最高幹部ヤヒヤ・シンワル氏を殺害することが軍事目標となっています。ハマス完全壊滅を掲げた大規模戦闘が休戦協議を事実上断絶させガザ市民の犠牲者は3万9600人を超えました。ガザ軍事侵攻の惨劇に世界各国の声は届いていません。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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