イスラム教シーア派武装組織ヒズボラ

昨年10月7日発生のガザ軍事侵攻から約11ヶ月。軍事侵攻によるガザ領内の犠牲者は4万人を超えました。崩壊した瓦礫の下には数万人規模の行方不明者の存在が指摘されています。アメリカとエジプト、カタールが仲介する休戦協議ではイスラエルとハマス代表団による直接協議が成立。イスラエル側の休戦要求は人質の完全解放とガザ最南部エジプト国境ラファ一帯に監視体制としてイスラエル軍を駐留させること。ハマス側の要求はガザ領内からのイスラエル軍完全撤退。双方の主張の隔たりから休戦協議は進展しませんでした。

イスラエルのネタニヤフ首相は休戦協議要件にイスラエル主導のガザ統治体制を繰り返し主張。この強硬姿勢が人質解放交渉の断絶に結びつきます。イスラエル軍はこれまでハマスに拘束されていた人質を複数人救出してきましたが、同時にガザへの攻撃拡大で人質が殺害される事態を引き起こしました。イスラエル国内では人質の犠牲を伴う戦術に反発の声が高まり反政府デモに拡大。ネタニヤフ首相退陣要求が強まっています。これまで何度もガザ休戦協議の進展に期待がかかりましたが、休戦協議の最中にイスラエル軍がガザ領内の学校爆撃を強行。さらに攻撃対象はガザ地区に限らず多くのパレスチナ難民が暮らすパレスチナ自治区ヨルダン川西岸（ウエストバンク）にも波及し犠牲者は約600人を超えています。

ガザ軍事侵攻発生当初から懸念された周辺国への戦闘拡大も予断を許さない状況になっています。イスラエル北側隣国レバノンを拠点とするイスラム教シーア派武装組織ヒズボラがイスラエル領内にミサイル・ドローン攻撃に踏み切ったことでイスラエル軍が報復攻撃を展開。約100機の戦闘機でレバノン領内270以上の軍事拠点を破壊しました。イスラエルのガラント国防相はイスラエル北部住民の保護を大義に徹底抗戦を承認しています。

ヒズボラはイランの軍事支援を受けるイスラム教シーア派武装組織でありながらもレバノン議会内で政党としての議席を確保。ヒズボラの意味は神の党。最高指導者はハッサン・ナスララ師。対イスラエル組織として1982年創設されました。戦闘員・関係者は約5万人。2006年にもイスラエルとの大規模軍事衝突を引き起こしています。ヒズボラはイスラム組織ハマスへの連帯を掲げ休戦協議の進展を考慮し攻撃を抑制してきたことを発表しました。イスラエルのネタニヤフ首相による休戦協議の破壊が第三国を戦闘に引き摺り込みました。戦闘の連鎖が中東全域に広がる危険が高まっています。