長期化するイスラエル軍によるガザ軍事侵攻に停戦協議再開の動きが確認されました。イスラエル軍は昨年10月7日に発生したイスラム組織ハマスによる越境攻撃の首謀者であるヤヒヤ・シンワル最高指導者を殺害。その後、休戦仲介国であるアメリカ、エジプト、カタールがイスラエルとハマス双方の代表団と接触したことでガザ戦後統治体制の要件をすり合わせた可能性が指摘されています。イスラエル軍はハマスの戦力は事実上壊滅状態と判断しながらもハマスのイスラム思想消滅は不可能であり、ガザ領内へのイスラエル軍駐留が安全保障上不可欠であると発表しました。さらに戦後統治体制としてパレスチナ難民支援を担う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動禁止法案を可決。ハマス越境攻撃にUNRWAの職員が関与していたことへの制裁措置が取られました。
ガザ軍事侵攻は開戦当初から周辺国に戦闘が連鎖しておりイスラエル軍はすでに北側隣国レバノンに地上侵攻を開始。これまでレバノン領内への爆撃で犠牲者は3000人を超えています。イスラエルに対峙するシーア派組織ヒズボラの最高指導者殺害以降も戦闘は拡大しておりレバノン北部バトルーンではイスラエル海軍部隊が上陸しヒズボラの海軍司令官を拉致したことが判明しました。イスラエル軍の医療施設への攻撃は50回を超えレバノン国内の医療施設の約4割が閉鎖されています。世界保健機関(WHO)が非難声明を突きつける中、アメリカ仲介によるレバノン停戦協議の進展も確認されていますがその要件は国境地域からヒズボラの完全撤退が主軸。ヒズボラのカセム最高指導者が停戦の受け入れに動くかは不透明な状況であり今後イスラエル側がさらなる条件を突きつけることが想定され交渉の難航は避けられません。
さらにイスラム教シーア派の大国イランとの軍事衝突も大規模な報復攻撃の応酬に陥っています。イラン革命防衛隊とイスラエル軍の報復攻撃は10月1日にイランからイスラエル領内へのミサイル攻撃が確認され10月26日にはイスラエル軍がイランの軍事施設への報復爆撃に踏み切りました。すでにイラン革命防衛隊のホセイン・サラミ最高司令官がさらなる攻撃を示唆しただけでなく、イラン革命防衛隊に関わる武装組織がイラン隣国イラクでのイスラエル攻撃体制を構築したことで、イスラエル軍はイランに関わるレバノン、シリア、イラク、イエメンの武装組織への警戒体制を再強化しました。イスラエルを軍事支援するアメリカ政府はイスラエルの攻撃は限定的でありさらなる報復攻撃をイスラエル側は望まずとイランに発信。戦闘の沈静化を図りますが、中東全域に広がる反イスラエルのうねりはさらなる軍事衝突に拡大する懸念が高まっています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
講演・セミナーの
ご相談は無料です。
業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。