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2024年12月11日

トランプ次期大統領の影響力

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今年11月に行われたアメリカ大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ元大統領の選出が決定しました。アメリカ国内が抱える移民問題、物価高のインフレ苦境、人口中絶論争など選挙戦の争点は多岐に渡りました。選挙戦の終盤まで民主党のカマラ・ハリス氏はアメリカ史上初の女性大統領への期待を背負い、子育て中間層支援を意識した幅広い融和策を提示したことで支持率優位のうねりが高まっていました。ただ、実際に私自身アメリカ大統領選挙現地取材に訪れると、ハリス氏をこれまで支持してきたヒスパニック系、アフリカ系、アジア系、イスラム教徒の投票動向が変化をきたしていることに気がつきました。顕著だったのは急激な物価高による国民生活基盤の崩壊は自由や公平、融和を掲げてきた民主党の政指針が要因であるという指摘、民主党バイデン政権4年間の政治実績は失敗であると判断する支援者に繰り返し遭遇したことでした。同時に、この国民生活を破綻させたインフレ退治をピンポイントで宣言したトランプ氏の言動には多くのアメリカ国民が生きるために傾かざる得ない状況であったのも事実です。共和党支持者、非支持者問わず表だった声を上げることのできない人たちの声を、トランプ氏がシンプルな言葉と政策指針で刺激した現実は確かに存在しました。

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来年1月20日に第47代アメリカ大統領に就任するトランプ元大統領。既に各閣僚人事を発表していますが、その人員配置が物議を醸しています。というのも国防や国務、世界各国への特使に身内や友人、ビジネスパートナーなど完全なるトランプ支持のイエスマンの布陣を展開してきています。ここには外交や地政学、歴史や民族問題、資源や環境を無視したトランプ流ビジネス手法であるディール(取引)の特徴が際立ちます。こうした閣僚人事は、アメリカファーストを遮断しようとする国家や組織に対し、断固とした刃を突きつけることを意味しています。特に依然戦闘が続くウクライナと中東パレスチナガザ軍事侵攻への影響は、甚大な結果を引き起こす懸念が高まっています。2年10ヶ月以上続くウクライナ戦争に関しては大統領就任前に戦争を終わらせると宣言しました。その内容はウクライナ東南部のロシア占領下にある地域をロシア側に割譲すること、代わりにウクライナに核兵器を配備するというシナリオを提案しています。ウクライナの国土約20%にあたる東南部一帯を武力侵略のロシアに譲ることはこれまで世界中が平和のために模索し続けた法律や憲法、国際規範を骨抜きにすることを意味します。トランプ氏の側近からはウクライナとロシア双方の犠牲者をこれ以上出さないための的確な政策であると理由が後付けされました。

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中東パレスチナガザ軍事侵攻に関しては、トランプ氏はイスラエル完全支援を明確にしています。イスラエル軍の攻撃により現時点でガザ市民4万4500人以上が犠牲となっても停戦協議の展望は依然見えていません。トランプ氏はハマスによる越境攻撃が戦闘の引き金であり、人質完全解放を認めなければ甚大な対価を払うことになると追求。パレスチナ自治政府が求めるイスラエルとパレスチナの二国家共存の方針は認めずに、イスラエル主導でのパレスチナ統治体制、パレスチナへのユダヤ入植活動やガザ地域におけるイスラエル戦後監視体制の強化を支援していくと明言しています。世界情勢がトランプ次期大統領の動きに引きずられていくことは間違いありません。世界各国が力による交渉ではなく、地域共同体の規範が改めて求められています。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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