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2025年01月27日

トランプ大統領とガザ軍事侵攻

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イスラエル支援のアメリカトランプ大統領がガザ停戦交渉の加速を発表しました。戦闘の停止はもちろん、今後のパレスチナ管理体制の土台としてパレスチナの存在を掲げた二国家共存は認めないこと、戦後のガザ地区はイスラエル軍管理下に置かれ新たなユダヤ入植活動の展開が新政権中東特使の人員配置から推測されます。イスラエル政府もトランプ大統領によるイスラエル優位の外交政策を後ろ盾にガザへの軍事強硬政策を既成事実化させ、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地域での入植活動をさらに拡大させることが容易に想定できます。これまでアメリカ政府によるガザ停戦協議の仲介と同時にイスラエルに軍事支援を続けてきた中東政策はダブルスタンダードとして世界各国から非難されてきました。ガザ領内で5万人近い犠牲者が出ている中で民主党バイデン元大統領政権下では次期政権への権限移譲の過程で中距離ミサイル含む約80億ドル(1兆2500億円)の兵器をイスラエル側に売却したことが確認されました。

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昨年10月7日に発生したイスラム組織ハマスによるイスラエル越境攻撃ではハマスの襲撃でイスラエル人だけでなく外国人含む約1200人が殺害され、251人が人質として拉致されました。イスラエル軍は救出作戦を続けるも現時点で96人が依然拘束され、生存者は62人と指摘されています。イスラエル国内では長期化する人質解放交渉に反発の声が高まっており、商都テルアビブで大規模反政府デモが頻発、イスラエル議会でもガザ軍事侵攻を強行するネタニヤフ首相への反論で解任されたガラント元国防相が国会議員を辞職しました。ネタニヤフ首相によるユダヤ強硬派と連帯した民間人の犠牲を問わない軍事戦術に非難の声が上がっていることは事実であり、イスラエル国内でガザ軍事侵攻の疲弊が目に見える形で現れてきています。

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昨年からはガザ軍事侵攻が中東全域に戦闘を拡大させ、現時点でもアラビア半島南端イエメン拠点イスラム教シーア派組織フーシとイスラエル軍による報復ミサイル攻撃が続いています。イスラエル軍事連帯のアメリカ軍までもがイエメン領内にあるフーシの軍事拠点を爆撃しました。ガザ軍事侵攻の長期化によりイエメン、イラン、イラク、シリア、レバノンといったイスラエル包囲網、通称シーア派三日月地帯と呼ばれる国々の武装組織がイスラエルとの軍事衝突に参戦してきました。イスラエル軍の圧倒的な戦力により各々の組織が壊滅状態に落とし込まれガザ地区がさらに孤立、衣食住のライフラインは断絶してしまいました。周辺国からのわずかな救援物資を届ける国連世界食料計画(WFP)の車両がイスラエル軍の攻撃にさらされ、ガザ地区とヨルダン川西岸での難民支援を続けてきた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動がイスラエル新法によって停止させられました。ガザ軍事侵攻の停止とは事実上イスラエルによるガザ完全統治時代のはじまりを意味することになりそうです。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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