2023年10月7日に発生したイスラム組織ハマスによるイスラエル越境攻撃から約1年6ヶ月。これまでの戦闘でガザ領内の犠牲者は5万140名以上。半数以上が女性と子供たち。イスラエル軍はガザ併合という軍事目標を打ち立て、未だにガザ全域への爆撃を強行しています。ガザ軍事侵攻の引き金はイスラム組織ハマスによるイスラエル領内での1200名以上の殺害と251名を拉致拘束したことにあります。即座にイスラエル軍は報復攻撃と人質解放作戦に踏み切り、人道を無視した戦術展開でガザ市民の犠牲者が急拡大しました。戦闘停止の機運が高まる時期もありましたが、イスラエルハマス双方が責任を突きつけ合い軍事衝突は再拡大を続けています。イスラム組織ハマスが拘束した人質251人のうち、現時点で死亡している可能性を含め59人が依然拘束下にあり、人質完全解放断絶は必至の状況となっています。
イスラエル軍の軍事侵攻はガザ地区だけでなくパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に連動しており、ユダヤ人入植活動を記録したパレスチナ人アカデミー賞監督ハムダン・バラール氏がイスラエル警察に拘束される事件が発生したことでも大きな非難を浴びました。イスラエル軍はガザ軍事侵攻以降、ジャーナリストを少なくとも75名を拘束下に置き、事実上ガザ領内の外国メディア取材を遮断しています。2025年3月から急拡大を見せたガザ軍事再侵攻ではすでに1000名以上の住民殺害が確認されており、イスラエルのカッツ国防相がガザ地区の一部併合の動きを示唆したことで、イスラム組織ハマスが限られた戦闘能力でのミサイル報復攻撃に踏み切りました。イスラエル軍のガザ再攻撃の後ろ盾には、アメリカトランプ大統領が控えており、ガザ地区をアメリカの所有管理地域として将来的に地中海リゾート開発への展望を発表しています。さらにガザ住民200万人以上の国外退去要求を打上げ、イスラエル政府はガザ住民国外移住要求の候補地として南スーダン、ソマリア、インドネシアの3カ国と交渉に入ったことが指摘されました。ガザ住民の人権や土地所有の権限を無視した国外退去要求には世界各国から反発の声が上がっています。
これまでの停戦協議仲介国であったカタールとエジプトが、新たな停戦合意条件としてハマス側に7日間ごと5人の人質を解放する要件を促しました。段階的に人質解放が確認され次第イスラエル軍のガザ完全撤退につなげるシナリオを提示しましたが、イスラエル側は受け入れを拒否。現時点においてもハマス壊滅作戦が加速する事態に陥っています。イスラエル国内では人質解放交渉を求める市民の大規模反政府デモが拡大しており、ネタニヤフ首相による連立政権運営の要であったハマス壊滅を掲げるユダヤ強硬派政党への配慮を非難しています。停戦仲介国がイスラエルハマス双方との戦闘停止交渉を継続させること。これこそが唯一残された停戦ライフラインであります。世界各国による停戦交渉の連帯力が求められています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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