砂嵐の吹き荒れる避難民キャンプ地の中で、小さな子供が一人泣いていた。両親の姿は見当たらない。ここはスーダン・ダルフールにある難民キャンプ。戦争で両親を無くした子供たちがかくまわれている。この小さな子供たちには抱きかかえてくれる両親も帰る家も空腹を満たす食料も存在しない。日々、戦争の犠牲にならない為に逃げ、隠れ、 生き延びる手段を探していた。
アフリカ北東部に位置しアフリカ大陸最大の面積をもつスーダン。この国の西部ダルフール地方で民族紛争によって300万人に及ぶ避難民が発生している。その大多数が子供たちであり、世界中から支援の手を差し伸べようとするも砂漠に囲まれたこの地域に物資が届くことは困難を極めている。
ダルフールには大小あわせて100以上の避難キャンプが設営されている。1つの難民キャンプ許容人数は約1万人、それに対して医者は1人、全てのキャンプが定員オーバーという劣悪な環境に立たされていた。さらに紛争による村の焼き討ちは日常であり、家族を虐殺された難民、子供たちが何日も砂漠を歩いてキャンプ地に命からがら逃げ出してくる毎日が続く。
キャンプ地の中は1km四方の広さを持ち、そこに白い布やビニールの切れはしを縫い合わせたテントが並んでいる。さらにそのテントの中にはベッドが3つあり、地べたの砂の上に薄い布が敷かれていた。電気も水道も無く、敷地内に掘られた臨時の井戸から飲料水を確保する。食料に関しては、世界からの支援物資で賄っており、砂糖、食用油、小麦などが一週間ごとに配給されていた。
子供たちの姿ばかりが目立つこのキャンプ地には当然学校はない。その日を食いしのぎ、命をつなげていくことが、教育よりも最優先せざるを得ない現状なのだ。まさに今を生きる子供たちなのである。
飢餓状態で泣き叫ぶ子どもたち、赤子を抱えて何日も医者の診察を砂漠の上に座り込んで待つ母親、食料配給に殺到する難民たち。
アフリカ民族紛争の全てがダルフールに凝縮されている。忘れ去られたダルフールの子供たちに世界の目が向く日はまだまだ遠い。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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