世界中でのテロの連鎖が止まりません。中東やヨーロッパだけではなく、テロというつながりはアジアにまで拡大してきました。バングラデシュでの日本人殺害事件、マレーシアやシンガポールでのイスラム国関係者による爆破テロ、インドネシアでは過激思想の若者たちが国内テロだけでなく、周辺国に越境して事件を引き起こす国際テロリストの動きが目立ちます。
島国である日本は地上で隣国とつながる国境という概念が少なく、諸外国でテロリストが陸路で世界中を行き来している状況から距離を置くことができていました。しかし、日本でもテロがより身近なものとして、懸念されています。
いままで世界規模でのテロの動きを見ていると、中東を拠点とする過激派組織イスラム国の系統に属するテロ組織とオサマ・ビン・ラディンが作り上げた国際テロ組織アルカイダの流れをくむ組織に大別することができました。
しかし、アジアなどでの現状を見ていくと、状況に応じてイスラム国を語る組織もあれば、アルカイダとも取れる特徴を示す事件などテロリストの分別化というよりも、テロリストが溶け合って地域ごとに都合のよい武装組織が勃興している感覚があります。まさに世界規模でのテロリストバブルが発生しているといえるのかもしれません。
インドネシアやマレーシアではイスラム教徒が多数を占め、他宗教や多文化との接触も多い、まさに国際都市国家といえるレベルにまで成長しています。過激派組織にとって、敬虔なイスラム教徒の若者たちを世界規模でテロ組織に組み入れていく最初の入り口は、インターネット経由での各国教育機関、特に宗教学に力をいれている大学が武装組織へのリクルートの主戦場になっているといわれています。テロ事件の実行犯と過激派組織が直接、接触することなく、お互いの顔もしらないまま、インターネットと教育現場という融合空間を利用し、自然と高等教育を受けてきた若者たちがテロリストの投網に巻き込まれてしまっている流れが懸念されています。
テロリスト養成を阻止する方法はもしかすると各国が大切にしている教育機関の持つパイプを世界規模で共有することが、一時的なテロの遮断のきっかけになるかもしれません。日本で暮らす私たちもテロという日常は決して遠い国の話ではないと誰しもが無意識のうちに感じ取ってきています。テロリストバブルをはじけさせることが急がれます。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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