日本では意外と気がつくことの難しい自由という存在。世界に目を向けてみるとこの自由を巡って衝突を繰り返し、たくさんの命が犠牲となっている現実があります。特に独裁政権と呼ばれる国々や地域では恐怖政治という日常に立たされ、自由な暮らしを抑え込まれている人々がたくさん存在します。ニュースで耳にする世界の強権リーダーには、リビアのカダフィー元大佐、エジプトのムバラク元大統領、中東イラクのサダム・フセイン元大統領、シリアのアサド大統領の名前があがってきます。最近では国内情勢が荒れているトルコのエルドアン大統領もその傾向が強まっていると指摘されています。
独裁国家の特徴を挙げるとすれば、なによりも言論の自由を奪ってしまうことにあると感じます。情報を統制してしまうこと。NOといえない環境で国民を縛りつけます。強権者に対して反対する者は問答無用で逮捕していき、恐怖を植え付ける。日本では信じられないことですが独裁体制下ではこうした手法は日常的に行われています。
取材で訪れた独裁体制下の国々ではこの自由という存在がいかにはかないことか痛感しました。特に目の前で遭遇した事件では、市民に対する不法逮捕、暴力、恐喝、消息が突然途絶えるなど、理屈抜きで生活そのものが奪われていました。そこに老若男女は関係なく、幼い子供たちまでもが抑えこまれていました。こうした国では、自国内のメディアでさえも権力の監視下におかれ、情報統制下に置かれていきます。
では、独裁体制に抵抗できる手段はないのかというと、実は取材から見えてきた唯一残された抜け道がありました。それは外国メディアによる報道という力です。まず、独裁体制の現状を外国の報道機関によって外部に持ちだしてもらうこと。そして、外国から情報を発信して、独裁下に置かれる環境に圧力をかけていくこと。これらが独裁体制下に残された市民の最後のライフラインとなっていました。ジャーナリストが独裁政権下で敵対勢力として次々と拘束される要因はこうした背景が存在しています。声なき声に気づき、届けること。今この時も世界中で抑圧された生活をおくる人たちがいます。情報という力が自由への架け橋になるのかもしれません。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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