2017年1月20日、アメリカでトランプ新大統領が就任しました。アメリカ合衆国の利益を最優先、その他の諸外国はどの国も公平に扱うというメッセージを世界に発信。裏を返せば、アメリカに不利益とみなされる国に対しては、相応の責任を追及すると脅しとも取れる発言が現実のものとなります。
国際情勢が激変している中で、特に注目しているのは中東情勢。過激派組織イスラム国殲滅を掲げたアメリカ軍・イラク軍の有志連合軍は、イスラム国の拠点を次々と奪取、過激派の取り締まりを強化してきました。いままでのオバマ元大統領の指揮下では、イラクやシリアなどのイスラム教でアラブ人国家に対しては、できる限り軍事介入を避け、あくまでもアラブ人がアラブの掟に沿って国家運営を行うという外交姿勢を組み立ててきました。
しかし、トランプ新大統領の中東介入は全く別物です。それは、アラブ側に肩入れをして情勢のバランスを保つのではなく、中東問題の核とも言えるパレスチナ問題、つまりユダヤ教国家であるイスラエルに支援を全面的に注ぎ、イスラエルと敵対しているイスラム教アラブ人国家側への関わりは、必要最小限にするというもの。これは、いままでのアメリカが得意としてきた通称「ダブルスタンダート」と呼ばれる二枚舌外交、アラブ国家にもイスラエルにも、情勢の都合によってアメリカの立ち位置を双方の利益になるようにみせるグレーな外交スタンスを破棄することを意味しています。
このメッセージは、イスラエル側に聖地や領土、多数の命を奪われたアラブ諸国の猛反発を引き起こし、かつての中東戦争の再燃が懸念されます。中東に限らずロシアや中国、そして欧州に対しても、いままでの軍事的な脅しをチラつかせたアメとムチ外交から、アメリカの国益を最優先し、損得を天秤にかけたビジネス外交を押しだしてくることが想定されます。国家間の密なつながりや連携することで生まれるバランスの均衡など、いままでのアメリカが理想としてきた国際指針が崩れさり、環境や領土、格差、差別、貧困問題など、世界の連携なしに解決できない問題がむき出しにされます。情報や人、ものが国境をこえて猛スピードで飛び交っている今の時代、一つの国だけでは問題を解決することはできない時を迎えています。歴史は繰り返すと言われる通り、約100年前の第一次世界大戦勃発前の世界の動きに、私たちが生きているいまの時代が重なりつつあるように感じています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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