難民キャンプでの暮らし。それは「戦争や紛争などによって故郷を追われた家族が避難民となり、管理された共同生活を余儀なくされる環境である」と定義されます。世界各国に点在する難民キャンプでの生活を実際に追っていくと、「生活の自由は制限され、将来の展望も見いだせないが、それは、一時的な仮の生活であり、いつかは故郷に戻ることができる。誰しもがそう信じている。」という共通した現状が見えてきます。
しかし、世界各国の衝突や差別問題、宗教や民族をあてはめた線引きが敷かれるなど、軋轢の被害者といえる避難民の環境はますます流動的となり、その管理体制を維持していくことさえも難しくなっています。中東やアフリカ、アジアでは多数の避難民がいまだ繰り返し発生しており、欧州やアメリカでも難民キャンプと生活保護施設が重なり合った難民シェルターのような施設が増大しています。人が平和を願い、生きる尊厳を認められ、自由に暮らすことができるという日常が許されない地域が世界には存在することを再認識させられます。
例えば、アフリカのスーダンのダルフール地方。政府中枢を固めるアラブ系スーダン人とダルフール地域のアフリカ系スーダン人の衝突で大量の難民が発生。難民キャンプ地が多数設営されるも、周辺では武力衝突が繰り返されています。一つのキャンプ地では約1万人の避難家族が暮らし、その避難者に対応できる医者の数は1人という現実。不定期ながらも1日に2回の食料配給の中、幼子を育てる母親の姿が医療テントの入口にあふれかえっていました。
一方、イラクやシリアの難民の一部は、隣国ヨルダンに設営された難民キャンプでの暮らしを余儀なくされていました。しかし、広大な土漠のなかに作られたキャンプ地の中は、まるで一つの街のように区画整理がなされ、様々な商店がならぶ、新たな避難生活のスタイルが出来上がっていました。難民当事者、難民を受け入れる国、国際機関、各国の協力や様々な支援団体などの連携によって、難民という立場を回復させる活動も世界では幅広くつながってきている現実がここにはありました。
難民の声を聞くことで今そこにある危機は決して遠い国のできごとではないと気がつくことでができると感じています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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