日本のように、子供たちが歩いて安全に学校へ通える通学環境は、世界ではまだまだ貴重である。奇跡的といってもいいかもしれない。
取材先で出会う戦火に生きる子供たちは、学校で学ぶために地雷地帯や兵士が立つ前線地帯などを、危険を背負いながら通学していた。
スクールバスや両親の見送りなど日本と同じような通学システムを持つ国もあったが、それでも自爆テロや拉致事件に巻き込まれることが続発していた。危険をおいながらも学校に通う子供たちにとって、学ぶことは何にも代え難い喜びであり、学校の教師陣も教育への熱意はぶれる事がなかった。
イラク・バグダッドの子供たちは、治安が混乱する町中を歩いて学校に通っている。通学路にはアメリカ軍の戦車や武装兵士たちが立ちはだかり、至る所に検問所がしかれていた。周辺では自爆テロも続発し、その危険度は世界でも最悪といえる。ただ米軍兵士たちが子供たちの通学に関しては寛容な目を向けていたのが印象深い。
南米コロンビアでは、通学路上で政府軍と反政府勢力との銃撃戦が勃発した。普段は穏やかな通学路が早朝から多数の兵士で埋め尽くされ、路上で隊列を組み武装組織撲滅作戦を展開する。子供たちはもちろん、仕事をこなす大人たちもその場に座りこんで、危険を回避するしかなかった。その道には武装勢力側が巨大な岩石を落とし、国軍の追随を遮断、父親たちが閉ざされた幹線道復旧の為に巨石を取り除いていた。
アフリカのソマリアでは、通学路がラクダ行商人のキャラバンルートと重なっている。そえゆえ子供たちは学校が休みのときには、ラクダを引き連れて隣町へ食糧を運んでいく。通学路と言えど、砂漠の中を迷わずにラクダを導いていく小さな姿は、立派なラクダ使いの勇姿であった。
アフリカ西部ガーナの女の子は、片道3kmはある森の街道をひたすら歩き続けていた。灼熱の中、教育支援で送られた制服と鞄を持ち、森の中に初めてできた学校に通学する。学校で学ぶ事に憧れを抱いていた女の子にとって、制服をきて学校に通えるという夢が実現した事は奇跡以外のなにものでもなかった。
世界の通学路はあまりにも環境が違いすぎていた。そして悲しい現状もあった。ただ唯一の希望は子供たち誰しもが学校に通いたい、勉強をしたいと断言していた事、これに尽きた。子供たちはやはり宝なのである。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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