中国北西部ウイグル自治区における子供たちの生活は家族を支えるための労働にすべてをかける。日々の生活力を小さな体で体現していた。
ある家族の一日を追いかけた。
そこでは両親以上に子供たちの存在が際立つ。家族にとって子供とは大切な家族の一員、それは言葉で語るだけではなく生き抜く為に必要不可欠な存在であった。
ここでは誰しもが太陽と共に目覚め太陽とともに眠る。人間の定めた時計の基準で動くのではなく、自然の摂理で生活を営んでいく。早朝4時、子供たちは目を覚ます。すぐに家畜であるラクダや馬の為にわらを運び込む。部屋の中ではイスラム教の礼拝をひっそりと行い、学校が無い日は両親とともに馬車に乗って麦畑にくりだしていく。馬車にゆられて10分、広大な麦畑では収穫期真っ盛りを迎え、子供たちは鎌をもって足早に麦畑の中を進んでいく。器用に素手で麦の束を押さえながら、一束一束刈り取っていく。そこでは家族の会話はない。母親と妹が刈り取られた麦の束を黙々と馬車に積み込んでいく。男の子が指をかまで誤って傷つけると、シャツの布切れで指を包帯のように補強する。お天道様が頭上に昇ると一度自宅に戻り、母親とともに小麦粉から麺を練り上げていきラグ麺というウイグル麺を作った。そのお椀のなかには庭でとれた杏の実を乗せていた。食後は一度お昼寝、午後は家屋の修復をして再び小麦畑にむかっていく。そしてひたすら刈り込みを続け、日が沈む頃に自宅に戻る。体中麦穂だらけとなり、汗と土で汚れた服を着替えて、両親と夕食をとる。そしてすぐに床にもぐりこむ。
この地域の子供たちは春夏秋冬、家族皆で生き抜いていく為に日々働き続けていた。先代から伝わり続ける仕事技法を一つ一つ身につけていく。住居となる家屋や倉庫までも手作りで築き上げ、技術ある者が地域住民それぞれの家庭をまわり手を貸していく。シルクロードの中継地点であるウイグル自治区は昔ながらの生活風習がそのまま残っていた。シルクロードの歴史は、子は宝と教えていたのであった。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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