先日、日本武道館で行われたコンサートに6500人もの人が集まって、大変盛り上がりました。大半が40歳以上で50歳代の人が最も多かったようです。「あのねのね」の人気も、まだまだ侮れない。大したもんです。
共演者として谷村新司や泉谷しげる、バンバンなどがいましたが、この動員は一重に自分の人気によると、出演者のそれぞれが思っています。久しぶりの「あのねのね」登場を懐かしさいっぱいで迎えてくれた大観衆。けれどそれ以上に本人達が久しぶりで、懐かしく感じていました。ヒット曲(?)のメドレーで前半は、赤とんぼの唄、魚屋のオッサンの唄、猫の怨念の唄、白蛇の呪いの唄などをザッと15曲。それでも15分もかからない短い歌ばかり。武道館が揺れましたね。大ウケでした。
「あのねのね」まだまだいけるね、面白い、と誰もが思ったことでしょう。僕らも素直にそう感じました。この世代は、テレビでAKB48が踊っていてもスクールメイツを見ているようでさほど心はときめかないし、お笑い芸人のトークにも心底笑えず、観るものがないと嘆いている人たち。気持ち良く笑いたいのだけど笑えるものが見当たらない世代なのでしょう。そこへ現れた「あのねのね」。日常の喜怒哀楽から独自のセンスで笑いを醸し出す天才です。さっきからちょっと自慢が過ぎると感じるでしょうが、我々には「自画(自賛)ジーサンズ」[©小室等]という、もう一つの名前が付いています。誰かの評価や評判を待っている時間は無くなってしまったので、もうこれからは自分のことを自分で誉めまくることにしたのです。
武道館では、腹抱えて笑わせたギャグソングメドレーの後、一曲だけ真面目な曲を歌いました。絶妙の構成です。これまでの人生を振り返って、よく頑張ってきたな―という実感を歌っています。家族や仲間のために、働いて働いて。悔しさや理不尽を、我慢して我慢して…。でもこれからは好きなことをやりましょう。大切なことは今を生きること、ですよね、と歌う「生きるチカラ」は、いわば自分への応援歌。
誰も誉めてくれないので、自分で自分に「よく頑張ったねー」と語りかける歌です。原田も僕も大好きなオリジナル曲ですが、歌い終えたら会場がシンとなってしまい、あーやっちゃったかなー、スベッたかなーと反省しつつ楽屋へ。ところが会場で聞いていたスタッフが、ウルウル瞳で「よかったです!みんな泣いていましたよ」と興奮のレポート。爆笑の会場は慣れていても、みんなが涙ぐむステージは初体験。スタッフも自画自賛癖なのかもと、半信半疑でしたが、その日からインターネットの書き込みに沢山の絶賛コメントが。こりゃ思いがけず、鉱脈掘り当てちゃったかな、と大喜びの今日この頃なのです。
90分間を一人でしゃべる講演会で僕が、「もし途中でしゃべることが無くなったら、赤とんぼの唄でも歌いますか」というと、結構多くの人が拍手してくれます。小難しい話を聞かされるより、脳天気な歌聞いてる方がいいや、という意味でしょうか。それも悔しいので懸命にしゃべって、これまでなんとか、一度も歌わずに済んでいます。講演会で持ち歌を歌ってしまうのは、講師として呼んでくれた主催者の意に反するし、わずかながら話術に関するプライドもあります。だから講演会で歌は歌わないのです。
けれど、です。この3分間の「生きるチカラ」には、僕の90分間の講演内容がすべて凝縮されて詰まっています。場合によっては、この歌なら講演の最後に、まとめとして一曲だけ歌ってもいいかなと思っているのです。
そんなリクエストでもあれば、簡単なカラオケCDでも持って出かけます。原田伸郎もご所望であれば、連れて行きましょう。講演と歌。歌は別ギャラ、だなんて言いません。聞いていただけるのであれば、喜んで歌わせてもらおうじゃありませんか。「あのねのね」に再び訪れた旬な季節。人生の二毛作目が始まりました。
清水国明しみずくにあき
タレント
「あのねのね」で一世を風靡。芸能界きってのアウトドア派、スローライフ実践者としても知られ、子ども達の生きる力を育むための自然体験イベント等を積極的に実施している。また自然と共に生きる自身の経験から、シ…
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