■サマータイムはお薦めできない
夏真っ盛りです。でも、前回の日射対策、断熱対策をしっかりやっておられれば、快適に省エネできていることでしょう。
さて、ピークカット対策の続きです。1日の電力需要曲線を見てみると、昼休憩にあたる午後0時~1時には谷間が出来ます。そこでこの谷間をずらしたり、分散したりできれば、消費電力のピークをなだらかにする事ができます。
特に、ピークは午後1時からですから、後ろにずらした方が効果的です。午後0時開始だった休憩時間を0時30分からや午後1時からにするのです。始業時間も遅くすればあまり無理なく、後ろにずらせるでしょう。
例えば、通常午前9時始業だったら、午前10時始業にして、休憩時間を午後1時30分からにするのです。さらに言えば、休憩時間を1時間半や2時間に延ばせばより効果的です。
よく、サマータイムとして始業時間を早める取り組みがありますが、これはあまりお薦めできません。
休憩時間が、ピークを迎える前の午前中にずれ、ピーク時間に盛んに仕事をすることになりますから、逆にピークを高めることになりかねません。
よかれと思って苦労して早起きしているのに逆効果では報われません。サマータイムは、長い日照時間を活かして照明のエネルギーを節約する事が主な目的ですから、その会社、団体としての節電、省エネにはなりますが、ピーク対策には向かないのです。
政府や電力会社、メディアが、ピーク対策である事を強調せず、節電、節電とばかり言うため、このような残念なことが起きるのです。効果的なのは時間を遅らせる「フレックスタイム」ですのでお忘れなく。
実は私も、以前は「節電の夏」というフレーズを使っていました。短く、使いやすい表現だからです。しかし、本質がピーク対策である事が伝わっていないと感じ、封印しました。メディアも、街頭インタビューで、「節電していますか?」「こまめに照明を消しています」などという、ピントのずれたやりとりを流さないようにしてもらいたいものです。そのためには、まずはメディアが本質を理解する必要がありますが。
■計画停冷
今のところ電力需給が厳しくなる感じはありませんが、今後の気象条件や自然災害によっては、さらなるピーク対策が必要になる可能性はあります。
そうなった場合でも、計画停電は社会的影響が大きいので、極力避けなければなりません。
私は、計画停冷をすれば良いと思います。
グループ会社、地域、建物のフロアごとなどで、いくつかのグループに分けて、順番に冷房を止めるのです。
例えばA、Bグループと2分割した場合、ピーク時間帯に、1時間のうち、毎正時から30分間はAグループが冷房を止め、毎時30分から30分間はBグループが止めるといった運用をするのです。
これが、3分割なら、1時間のうち20分間だけ、4分割なら15分間だけ止めます。細かく分ければ、ピークカットの効果は減っていきますが、各グループの負担は軽くなります。
ただし、この方法は、前回書いた日射や断熱の対策をした上でやらないと、冷房を止めている間の室温上昇が激しくなってしまいます。そうなると、取り組む人達の負担が増えますし、冷房再開後の空調エネルギーが大きくなって、ピークカットの効果が薄くなってしまいますので注意が必要です。
この方法は、各世帯の電話番号、あるいは番地の末尾が偶数か奇数か、といった分け方をすれば、一気に満遍なくグループ分けが出来ます。もしも猛暑が原因で計画停電を真剣に検討しなければならない事態になったなら、まずは計画停冷を広く呼びかければ良いと思いますし、私は、本当に計画停電が実施されそうになったら、それを阻止するため、自由参加の市民運動として、ネット等を通じて呼びかけようとも考えています。
富永秀一とみながしゅういち
環境ジャーナリスト
私はアナウンサー時代から、環境に関する番組を制作してきました。現在は“無理なく続けられるエコライフ”をメインテーマに、テレビ番組制作、ネット放送、書籍・記事執筆等により情報発信中です。講演では、環境・…
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