「ぼっち」という言葉をご存じでしょうか?
「ひとりぼっち」の略で、友達がいなかったり、単独行動を好む人を指します。
二、三年前には、高校生や大学生の間で「ぼっちメシ」なる言葉が流行りました。学校内で、ひとりでご飯を食べるという意味です。
「ぼっち」に見られたくないからと、みんながいる校内の食堂ではなく、わざわざトイレの中で食事をするような子どももいました。こちらは「便所メシ」と言います。
こうした言葉が使われることを考えると、周囲から「友達がいない=ぼっち」と見られるのは、子どもにとってかなりのプレッシャーなのでしょう。
ところが最近の取材では、「ぼっちOK」という子どもが現れてきました。正確に言うと、「リアル(現実生活)でぼっちだとしても、ネットにはたくさん友達がいるから、それで満足」というものです。
現実の友達づきあいでは、楽しいことがある一方、無理して相手に合わせたり、何かと気を使うような場面も多いものです。たとえば同じクラスの友達と、学校や塾、家に帰ってからでもずっとつながっている関係。
以前なら、帰宅後は友達のことなど気にしなくて済んだものが、今ではLINEのようなSNSでたえず意識せざるを得なくなっています。そんな関係がわずらわしいから、「ぼっちOK」というわけです。
ただし、単純に「リアルの友達がめんどくさい」という話ではありません。ネット上の友達のほうが真の友達、心が通じ合う「心友」だ、そんなふうに話す子どもが少なくないのです。
そう、ネットで築いた絆は、「親友」ではなく「心友」。お互いに、本名や住所、顔さえ知らなくても、むしろそのほうが心を開けるというのです。
確かに私たちおとなも、見ず知らずの人のほうが悩みを打ち明けやすいという場合があります。個人的なトラブルなどは、親しい関係の人には隠しておきたいといった場合もあるでしょう。
それでもおとなは、現実の生活や人間関係から逃れることはできないと知っていて、だからこそなんとか折り合いをつけています。
子どもたちがネット上のつながりだけを重視する、そんな現状はどこか危うく感じられてなりません。
石川結貴いしかわゆうき
ジャーナリスト
家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…
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