このところ、中学生や高校生を対象にした講演のご依頼をいただくことが増えました。彼らはネットの現役世代ですから、「SNSって何?」とか、「スマホゲームの仕組み」とか、そうした話にはたいして興味を持ちません。むしろ、いちいち言われなくてもわかっていることでしょう。
では、「フィルタリングを設定しましょう」とか、「掲示板に誰かの悪口を書き込んではいけません」とか、そういう話ならいいでしょうか。
この手の話は、警察や携帯電話会社が実施する「ネット安全教室」のような場でよく聞かれます。もちろん大切なことなのですが、当の生徒たちの反応は今ひとつに感じられます。
実際、私が取材する中学生や高校生は、「マトモなことを言われてもつまらない」と苦笑したりします。そこで、私の講演では、できるだけ彼らの興味や関心に沿った話をするように努めています。
たとえば、「スマホの利用時間をお金に換算するといくらになる?」といった内容。
まずは中学生や高校生に、「家庭で用意するもの」を伝えます。それは、100円ショップなどで買った日付入りのカレンダーと地元で配布されている無料の求人広告です。
今なら夏休みの時期ですから、家で過ごす時間も多いでしょう。朝、起きたらすぐスマホ、そのままずっとスマホ、夜になってもまだスマホ、こんなふうにスマホ三昧の場合もあるかもしれません。
そこで日付入りカレンダーに、1日のスマホ利用時間と利用内容を書き入れます。自分が何時から何時まで、どんなことに利用したのかを記入するわけです。
1ヵ月分たまったら、カレンダーを取り外して毎日の利用時間の合計を出します。仮に1日あたり10時間使っていたら、1ヵ月(30日)では300時間になります。
次に、求人広告で地元のアルバイトの時給を見てみましょう。「コンビニ・高校生800円」とあったら、この800円に300時間を掛けるのです。
すると、24万円! ビックリするような金額が出てきます。
私はこの数字を示しながら、彼らに言います。「もしもあなたたちがスマホを利用する時間分、コンビニでアルバイトしていたら、1ヵ月で24万円も稼ぐことができました」と。
もちろん、アルバイトしなさいと言っているわけではありません。子どもたちに「具体的な数字」を示して、自分のスマホ利用を振り返ってもらう材料にしているのです。
こうした数字を出すと、会場にいる生徒たちは「わぁ~!」と驚きの声を上げます。「まじ、ヤバイ」とか、「スマホやってるより、ほかのことしたほうがいいよね」と素直に反応してくれるのです。
「お金に換算するといくら?」と同様に、スマホの利用時間を勉強や読書、スポーツなどに費やしたらどれくらいの「成果」が出るか、このような話もしています。
子どもたちに「本当に響く話」をするために、私は彼らの目線を大切にしています。ご興味のある方は、ぜひ講演を聞きにいらしてください。
石川結貴いしかわゆうき
ジャーナリスト
家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…
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