「ウソ告」という言葉をご存知でしょうか。LINEなどのSNS上で「好きです」、「つきあってほしい」といった告白をするのですが、実のところそれはウソ。告白された相手が、「私も好きです」とか、「つきあいたい」などと返すと、「ウソだよ、バカ」、「勘違いしてんじゃねぇよ」とひどいメッセージを送ってきたりします。
この「ウソ告」が今、中学生に流行っています。でも似たようなことは昔からあったのでは?そう思う人もいるでしょう。確かに以前からありました。たとえば相手の家にいたずら電話をかけて「ウソ告」するとか、ウソのラブレターを書いて学校の机の上に置き、相手の反応を見てみんなでからかうとか。ただし、電話や手紙という方法では、「やっていることが周囲にバレやすい」という特徴があります。家に電話をかけたら相手の親が出る可能性もありますし、手紙なら書く手間がかかる上、先生やほかの生徒に見つかってしまうかもしれません。
だから、やるほうも「これをやれば自分もヤバイ」といった、現実感覚や罪悪感を持ちやすかったわけです。
それがLINEでは簡単にできてしまうので、罪悪感を持ちにくい。むしろ、ノリに任せて、おもしろいからやっちゃえ、という軽い気持ちでやることができます。その場のことしか考えていない軽さ、現実感覚の希薄さ、ここが大きな問題でしょう。
「ウソ告」をされた被害者が傷つくことはもちろんですが、仲間から「ウソ告しろ、しないとハブる(仲間はずれにする)」と言われて強制的にやらされる中学生もいます。強制されるだけでもつらいのに、自分の行動で誰かを傷つけてしまうことになる。しかも、「強制的にやらされた」という事実が相手(被害者)に伝わらなければ、自分が加害者として恨まれることになります。「ウソ告」をされるほうも、強制的にやらされるほうも傷つける。要は陰湿ないじめであり、許されるものではありません。
「ウソ告」だけでなく、いじめ動画の投稿などもそうですが、自分の言動に現実感を持てない子どもが増えています。SNSで誰かをいじめたという経験を持つ子どもたちに話を聞くと、「深く考えず、ついやった」、「みんながやってるから、平気だと思った」という声が多いのです。
人と人とのコミュニケーションでは、言葉から得る情報は2割と言われています。残りの8割の情報は、互いの表情や仕草、声のトーンなどから得ています。ところがSNS上のコミュニケーションは、表情や仕草などがわかりません。もしかしたら相手はショックで青ざめ、震えているかもしれないのに、そういう現実的な状況が見えない。そのぶん、現実的な判断ができず、ノリに任せてやってしまう可能性が高くなります。
また、最近の子どもには、過激なことや目立つことをするほどウケる、という感覚もあります。仲間内で盛り上がるためには、平凡な話題より、みんなが食いついてくる話や行為のほうがウケがいい。そういう「間違ったウケ狙い」も、「ウソ告」の一因と言えるでしょう。
SNS上での問題行動を防ぐためには、「これをやったらどうなるか」という具体的な教育をすることが大切です。たとえば、SNSで何か言ったりやったりすると、「ログ」が残ります。ログとは、物事が発生した日時や内容の履歴のことで、要は自分のやったことが記録されているわけです。あとから「こんなことしていない」という言い訳はできませんし、自分のやったことの記録が将来的にずっと残る。だからSNS上で何か言うとき、やるときは「これをやって将来的に大丈夫か」としっかり考えさせることが大切なのです。
被害に遭った場合も、記録をもとに誰かに相談しましょう。「こんなひどいことをされた」という証拠があるのですから、きちんと被害を訴え、解決の方法を探ってください。LINEには、「通報」や「問題報告フォーム」というものがあります。誰かに嫌がらせなどを受けた場合には、LINE社に通報し、トークの履歴などを提供すれば対処してもらうことができます。
こうした情報をしっかりと伝えることで、子ども自身に自分の行動や行為を考えさせます。「これをやったらどうなるか」を正しく理解できれば、問題行動の防止につながるはずです。
石川結貴いしかわゆうき
ジャーナリスト
家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…
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