夏休みに入り、子どもづれの家族の姿をよく見るようになりました。いつの時代も子どもが笑顔で元気にしている姿を見ることは嬉しいことでもあります。
先月テレビが地デジ化されアナログ放送が58年の幕を閉じました。この58年の歴史は、人をも大きく変えたように思います。人がひとになるということが、随分疎かになってきました。文明が発達し物が豊富になった分、人が寄って立つこと、人に対する思いやりや配慮が薄くなってきたように思えてなりません。それは、大人も子どもも共通して言えることです。
昔は、海外旅行や贅沢をしなくても学校のプールや野山を駆け巡り、真っ黒に日焼けし、夏休みが終わるころには水着のあとがくっきりと残り、日焼けのぶんだけたくさんの楽しい思い出をそれぞれ抱えて2学期に進むという時代でもありました。
しかし今は、少し違うようです。温暖化のせいもありますが、外でかけまわり真っ黒に日焼けした子どもをあまり見なくなりました。それに変わって、電車の中や公共施設の中で子どもの姿を多く見るようになりました。気になることは、電車の中や、公共施設を自分の家と勘違いして、他の人のことも考えずに行動をする親子ずれが多いということです。
特に電車の中は、夏休みになると私物化したマナーの悪い勘違い親子が多くなります。靴を脱がずに座席に座る子ども、電車の中を大きな声をだして駆けずり回る子ども、座席を家族全員で確保し空いている席には、荷物を置き平然としている親、座席の下に何かをこぼしても拭かない親と子ども。子どもの迷惑行動を注意もせずにニコニコ笑いながら見つめる親たち。いつから日本人は、こんなに情けない人間が多くなってしまったのでしょうか。
おそらく子どもの親自体も子どもの頃の躾が、しっかりされないまま大人のなりそのまま親になったのでしょう。子どもはすぐ傍にいる親を人のモデルとして育ちます。そしてその子どももまた、その親と同じ大人のマナーを持って育つことになります。よく考えてみれば恐ろしいことです。それだけ、大人の行動や言動は注意をする必要があります。
子どもの躾そして教育は、机上のものだけではありません。むしろ教科書を離れたところに人として学ばなければならないことが数多くあります。
特に夏休みは、人がひととして育つ過程のなかで大切な時間でもあります。他の人との行動の中に身を置いた場合、お年寄りに席を譲る行為や、人ごみの中では、人のことを考える行動をとることの大切さを、生きた学びとして子どもたちに育ませる貴重な時間でもあります。
夏休みは、心も身体も解放することも大切ですが、自由に行動させることが、愛情ではありません。大人は一緒に行動できる休みの中で、子どもが子どもの時代にしっかりと学ばなければならないことを、子どもとの行動を通して教え導く必要があります。モラルのない大人をこれ以上増やさないためにもそして、子どもを本当に大切に思うのであれば子どもの頃にしっかりと人がひとになる教育を忘れないでいてほしと思います。
子どもにとって、楽しい、愛情に満ちた体験、思い出こそが精神的な財産になります。以前このコラムでもお伝えしましたが、教育の語源とも言われている「パイディア」(paideia)は、「子どもを善くする」という意味をもっています。私たち大人は、この教育の語源の意味を忘れずに、子どもの心の成長に寄り添う必要があるように思います。
春日美奈子かすがみなこ
フリージャーナリスト
國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。
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