子どもの自殺が後を絶たず社会問題となって久しい。
その原因の多くがいじめによるもの。
自らの手で命を絶った子どもたちの思い、そして子どもに先立たれた親たちのやり場のない悲しみ。どちらを考えても心が痛む。
これは、教育現場だけでなく社会全体そして、生ある人間一人一人が真剣に考えていかなければならないことであるように思う。
人が孤立化し、自分を守ることが精一杯で、他人の幸せを祈る余裕もない今、大人の社会力の低下が、諸問題の遠因になって子どもの世界に影響を与えている。
いじめは、他者を思いやれる人間性あふれる子どもの共感力や想像力ひいては、子どもの社会力を育まなければ、根本的な解決に結びつかないように思う。
人と人が繋がる力が、非常に希薄になってきた。人が人として成長していくためには、互いに助け助けられながら、その中で様々なことを学び成長していくものである。そのなかで、他者の立場を理解し、相手にこれを言ったらどのような心の状態になるのかという想像力を持つことで、相手の心を理解することを学ぶ。想像力は相手に対する思いやりにつながり、思いやりは人に対する愛につながるように思う。子どもが育つうえで、互いを受け入れあうことはとても大切なことである。
その相互理解をする能力が、今の子どもたちは弱くなっている。他者の心を理解する能力の発達には、子どもに寄り添う大人の責任が大きいように思う。
助け合いや思いやりの心を育むことに、多くの関心が払われる必要がある。
昔は、正義が正義として、しっかり確立していた。人の道にそれた行為に対して、それぞれがはっきりと悪いことだと、声をあげることができた。そして、しっかりと声をあげる者がほとんどで、間違いを皆で正す方向であったのが、今は、正しいと声をあげられない社会になっている。子どもの社会のいじめも昔は、いじめに対してはっきりと周りの者が声をあげられる状況であったように思う。今は、声をあげると自分が、その対象にされるという悪しき状態があるようだ。いじめの加害者も何らかの暗闇を心に持ちながら子ども時代を生きている。子どもが、子どもの時代を安心して過ごすことができないことは、とても寂しいことでもあり、真剣に考えていかなければならないことでもある。
子どものこういった姿を通して、大人や社会に教えたことは何なのか、そうした子どもを生み出してしまった社会をどうすればよいのか丁寧に解きほぐし正していく時にきているように思う。辛い子ども時代を過ごす子どもがふえることは、社会が辛く困難なものになることでもある。かけがえのない子ども時代を守ることが、ひいては未来の社会を守ることにつながる。子どもは社会や大人が育てたように育っていく。
子どもは本来純粋で無垢な種子です。やがてどんな花を咲かせ、実をつけるかは全て大人の手に委ねられていることを認識しなければならないように思う。
相手の痛みに対する思いやりのある人間に育てて欲しい。心豊かな人間的な環境に身をおくことで、子どもは必ずそういう体験を通して成長し、学んでいく。子どもにはそれだけの力がある。
子どもにそれを伝えるためにも、大人自身がしっかりと人と人との和を持ち心の豊かさを育むこと、そしてその姿を子どもに見せることが重要になるように思う。全ての子どもたちの目が、そして心が濁らないように、しっかりと子どもの心の声に耳を傾けられる大人でありたい。
春日美奈子かすがみなこ
フリージャーナリスト
國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。
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