私が受け持ったある1年生の女の子は、入学したときすでに文章を書くのが得意で、その表現力はずば抜けていました。その理由は親子日記でした。
親子日記とは、1冊のノートに子どもと親が順番で日記を書いていくものです。まず子どもが日記を書いて、それを読んだ親が返事や自分自身の日記を書きます。親子の文通のようなものです。
その女の子は、幼稚園のときからお父さんとの間で親子日記を始めました。最初は、お母さんに字を教わりながらひと言ふた言書くだけでした。
ところが、お父さんの返事が楽しみで続けているうちに、字もすべて覚え、だんだん長く詳しく書けるようになりました。
ただ、書く気がしないときは、「きょうはつかれた」のひと言で終わることも度々あったそうです。
その子は、お父さんとのやり取りを楽しみながら、なんの苦労もなくそれだけの能力を身につけたのです。おまけにお父さんとのコミュニケーションもばっちりです。
私は、学力を上げるためにはいわゆる”勉強”だけでなく、生活や遊びの中で知的に鍛えることが大切だと考え、それを”楽勉”と呼んでいます。
この親子日記は楽勉の中でも極めて効果の高いものですので、取り組んでみるといいと思います。
しかし、注意して欲しい点もあります。それは、親子日記はすばらしいものですが、どの子も乗ってくるとは限らないということです。
乗ってこないのに強制すると楽勉どころか苦勉になるだけで、よけいに書くことが嫌いになります。ですから、無理強いは禁物です。
また、親子日記の返事は、説教調にしないで共感を大切にしてください。これが楽しみながら続けるためのコツです。
親野智可等おやのちから
教育評論家
教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。『子育て365日』『反抗期まるごと解決BOOK』などベストセラー多数。人気…
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