「第一志望に合格できたのは、もとをただせば、長女が小学五年生になる頃、過去問(=志望校の過去の試験問題集)の中で簡単な問題をやらせてみて解けたことが大きかった気がします」
私の取材にこう答えてくれたのは、桜蔭中など難関とされる中学に合格した子どものパパである。彼曰く、「解けた」という喜びが自信に変わり、私立女子中学の最難関である桜蔭中を「受けてみようかな」という気持ちに結びついたのだそうだ。
これを私たちの子どもに当てはめるなら、「できた」という喜びや「解けた」という感動を与えれば、子どもの中でやる気のスイッチが入り、勉強することへのモチベーションが高まるということになる。
子どもの多くはチャレンジすることが好きだ。男の子は概して冒険好きだし、男の子より精神的な成長が早い女の子も、ちょっと背伸びすることを好む。だとすれば、これを応用しない手はない。
子どもがある程度、机に向かうことに抵抗がなくなったように見え、勉強することに面白味や楽しみを見出しているように感じたら、やや難しい応用問題に挑戦させる方法もあるということだ。
「これ、○○ちゃんの学年のレベルでは難しいほうに入る問題だけど、やってみる?」
「できなくたっていいんだよ。できなくて当たり前なんだから。でももし解けたらすごいことだよね?」
こんなふうに、「できなくて当然」という前置きをしつつ、子ども特有の冒険心や背伸びしてみたい気持ちを煽ってみるのだ。
そして、もし子どもが正しい答えを導き出したら、「天才くん!」などと言って抱しめ、できたことを大げさにほめていただきたい。子どもは、難しいとされる問題を解いたことで自信が芽生え、「もっと難しい問題に挑戦したい」という気持ちになる。
逆にできなくても何も問題はない。投げ出そうとする前に、パパが「じゃあ一緒に解いてみようか」と水を向け、「協力してやっつける」という姿勢を見せればいい。
それでも解けない場合、模範解答を見ながら
「さすがに難しかったね。この問題は『横綱』クラスだな。じゃあ『大関』か『関脇』なら勝てるか、やってみよう」
などと語れば、子どもが再び勉強嫌いになるリスクはまずないだろう。
清水克彦しみずかつひこ
びわこ成蹊スポーツ大学特任教授
文化放送入社後、政治・外信記者を経て米国留学。帰国後、ニュースキャスター、南海放送コメンテーター、報道ワイド番組チーフプロデューサー、解説委員などを務める。大妻女子大学や東京経営短期大学で非常勤講師を…
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