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2012年06月15日

トンボ好きの子はトンボ好きでいい

 私は子どもの頃、歴史小説にはまり、小学三年生で織田信長、小学四年生で源氏と平氏の研究に没頭した経験がある。
「いつまで源氏の家系図ばっかり眺めてるの? 宿題やったの?」
 普通なら、両親からさすがに小言のひとつも言われそうなものだが、私が夢中になって取り組んでいるものは優先させてくれた両親に今でも感謝している。

 では、その熱中体験が何かの役に立ったのだろうか。
 確かに、後に社会科や日本史の点数がおしなべてよかったという以外、歴史学者になっていない現状を思うと、大きなアドバンテージにはなっていないように見える。

 ただ、何かに夢中になって取り組んだ体験は、いやがうえにも無我夢中で取り組まざるを得ない受験勉強や就職活動、さらには社会に出て専門分野を集中して勉強するうえで、大いに役に立ったと思う。 
私は皆さんの子どもにも、そういう体験をさせてあげてほしいと願っている。

 私が過去に取材で出会ってきた子どもたちで言えば、開成中・高等学校から現役で東大理科Ⅰ類に進んだ男の子は、子どもの頃、「カブトムシ博士」と言われていたそうだ。

 海城中・高等学校から早稲田大学に進んだ男の子の場合はトンボである。
自宅が首都圏の郊外に位置していたせいか、トンボを目にする機会が多く、小学校低学年の頃から、オニヤンマやギンヤンマなど、さまざまなトンボを標本にしたり、そこから発展して、世界のトンボを研究したりしてきたという。

先に紹介した東大の男の子は、二年間の前期課程が終わると、後期課程は理学部に進みたいと言う。後者の早稲田の男の子は、いずれ環境に取り組むNPOを立ち上げたいと語っている。
「三つ子の魂百まで」と言うが、彼らがこう語るのは、それぞれ小学生時代にカブトムシやトンボに夢中になった体験が強く影響を与えているためであろう。

 原体験は大きな力になる。夢中になって取り組む対象は、楽器でもスポーツでも、私のように信長でも源平合戦でも何だっていい。

 時間を忘れて没頭できるということは、それだけ集中し知識になっている証拠なので、それがテレビゲームや携帯メールなどでない限り、「そんなものをやったって、ちっとも勉強のプラスにならない」 などと思わず、子どもが夢中になっているものを応援してやろう。子どもは「夢中になれる喜び」を味わい、「時刻表が好きだった子どもが数学に目覚める」とか、「お菓子作りの没頭していた子どもが理科に興味を持つ」など、集中力を別の分野へと発展させていくことだろう。

清水克彦

清水克彦

清水克彦しみずかつひこ

びわこ成蹊スポーツ大学特任教授

文化放送入社後、政治・外信記者を経て米国留学。帰国後、ニュースキャスター、南海放送コメンテーター、報道ワイド番組チーフプロデューサー、解説委員などを務める。大妻女子大学や東京経営短期大学で非常勤講師を…

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