「挨拶ができる子は学力が伸びる」
首都圏を走るJR線で見た進学塾の車内広告のコピーである。筆者も、小中学校受験の現状を取材しながら、きちんと挨拶ができる子どもは、表現力が豊かで好奇心旺盛、加えて、挨拶をするようにしつけてきた両親も、生活習慣を整え、勉強する習慣をつけることに力を入れてきた方がほとんどだと感じてきたので、「挨拶ができる子=頭のいい子」という図式はおおむね当たっているように思う。
しかし筆者は、もっと高い確率で、「挨拶できる子=素直な子」と言えるのではないかと感じてきた。
実はこの「素直な子」にしておくというのが、夫婦の戦略として子どもを伸ばす大きな鍵となる。子どもは成長過程のなかで幾度か反抗期を迎え、小学校高学年ともなると、親の言葉に耳を貸さなくなったりするものだが、基本的に素直であれば、親の言葉はもとより、学校や塾などの先生のアドバイスをそのまま受け容れることができるからだ。
筆者はこれまで、著書や講演の中で、「オアシス言葉」(=おはようございます、ありがとうございます、失礼します、すみません)が、子どもを「素直な子」にし、ひいては学力を伸ばしていく基本になると述べてきたが、それはこのような理由からである。「オアシス言葉」は、それぞれ、相互の気持ちを明るくする言葉、感謝の意を表す言葉、相手に配慮する言葉、そして、素直な心を育む言葉として、コミュニケーションの起点となる言葉である。
こうした「オアシス言葉」を、子どもがしっかり言えるようにすること、すなわち、まず親が、これらの言葉を日常生活のなかで高い頻度で用い、子どもの範となることは、子どもの力を最大限引き出すうえで重要なポイントになるのだ。
筆者は家庭のなかで意識して「オアシス言葉」を使うようにしている。
朝は「おはよう」や「行ってきます」、夜は「ただいま」や「おやすみ」を明確に言う、妻子が何かしてくれれば「ありがとう」、相手が何かしているところに割り込んだり、手を止めさせたりする場合は、「ちょっと失礼」、筆者自身が誤解していたり、間違った言動をした場合は「すまん」や「ごめんね」を頻発している。そんな習慣が夫婦間で当たり前になると、子どももいつしか、きちんと「オアシス言葉」を自然に発することができるようになる。
言うまでもなく、子どもはひとりでは成長できない。先生や親、周囲の人たちの力を借りながら学び、伸びていくことになる。そういう中で使用する「オアシス言葉」は、コミュニケーションを円滑にし、子ども自身の心も向上させるスイッチのようなものなので、子どもに正しく使わせたければ、身近にいる親が、「オアシス言葉」のプロを目指すことだ。
清水克彦しみずかつひこ
びわこ成蹊スポーツ大学特任教授
文化放送入社後、政治・外信記者を経て米国留学。帰国後、ニュースキャスター、南海放送コメンテーター、報道ワイド番組チーフプロデューサー、解説委員などを務める。大妻女子大学や東京経営短期大学で非常勤講師を…
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