「仕事は家庭に持ち込まない」という人がいる。私自身も自宅に帰ってまで企画書を作成したり、打合せの電話をかけたりしたくないので、極力、仕事は外で済ませるようにしている。
しかし、仕事の話はどんどん家庭に持ち込むように心がけている。なぜなら、今日、会社であった出来事や見聞きしたニュースを子どもに話して聞かせることが、子どもの視野を広げ、職業観を植えつけることにつながるからだ。
東大合格者数で全国トップレベルを維持している東京・開成中の加藤丈夫理事長は、「子どもの学力を伸ばすには親子の対話が不可欠です。開成に入学してから学力が伸びる子は、特に父親が自宅で食卓を囲みながら子どもときちんとコミュニケーションをとっている家庭の子どもです」と述べている。また、百ます計算で知られる立命館小学校副校長の隂山英男さんも、「食事をしながらの家族団らんのひとときを少しでも設けてほしいと思っています。小学校を卒業し、中学や高校になっても伸びる子は、家族との対話時間が多い子です」と語っているくらいだ。
景気が低迷し、百年に一度といわれる未曾有の不況に見舞われている今、仕事を持つ父親や母親は、それぞれの職場でハードな仕事に直面し、多くの残業時間を余儀なくされているかもしれない。
おまけに団塊の世代がごっそり退職し、職場の中で能力主義が台頭し始めた昨今、「とても家庭のことまで顧みる余裕などない」という人もいるだろう。
しかしながら、子どもの学力アップを進学塾や補習塾だけに任せていると、子どもの学力は伸びない。
事実、文部科学省が二〇〇七年から実施している全国学力調査では、「親との対話をよくしている」と答えた子どもと「ほとんどしていない」と答えた子どもの正答率の差が、十五~二〇%もあることが明らかになっている。
これは数値で見える学力だが、対話時間が多ければ、思考力や表現力といった見えない学力も身につき、トータルな面で「頭のいい子」へと育んでいくことが可能なのだ。
このような点から、私は、講演や執筆活動を通じ、「子どもを伸ばしたいなら塾代をかけるより対話時間に時間をかけよう」と訴えている。
親が子どもに「なぜ働いているのか」をはじめとして、「仕事での喜びや苦労」や「景気が仕事に与える影響」などを語れば、子どもも知らず知らずのうちに目を社会へと向け、将来への夢を心に描き、そのために勉強するようになるはずだ。
清水克彦しみずかつひこ
びわこ成蹊スポーツ大学特任教授
文化放送入社後、政治・外信記者を経て米国留学。帰国後、ニュースキャスター、南海放送コメンテーター、報道ワイド番組チーフプロデューサー、解説委員などを務める。大妻女子大学や東京経営短期大学で非常勤講師を…
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