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2010年09月10日

「同調圧力」に押しつぶされる

 高校の教室で、一人の男子生徒が同級生集団にこづかれ、蹴りを入れられている。嫌がる被害者の叫び声と、はやし立てる周囲の大声。インターネット上では、このような「いじめ動画」を簡単に見ることが出来る。

 カメラ機能が付いた携帯電話の登場で、いじめている様子を加害者が動画撮影してネット上に掲載するという、新たな手口が広まった。被害者の名前や学校名などの個人情報が一緒に書き込まれる場合もある。

 ネット上では、一つのサイトに掲載された動画や書き込みを第三者がコピー&ペースト(貼り付け)し、短期間で多数のサイトに転載することが可能だ。被害者側は削除しようにも追いつかず、自分がいじめられている「実況中継」が多くの人の目に触れるのを、息を潜めて見ていなければならない。

 子どもに人気の「プロフ」でも、いじめは横行している。A子は自分のプロフに「死ね」「ブス」「デブ」などのコメントが並んでいるのを見つけた。さらに「これを書いているのは、あんたの身近な友達だからね」との記述。「もう誰も信用できない」と訴える。

 08年10月には、さいたま市立中学3年の女子生徒が同級生のプロフに「キモイ」「一緒にプールに入りたくない」などと書かれ、自殺した。援助交際や窃盗の常習犯などと根も葉もない記述をされ、不登校やノイローゼになったり、就職の内定を取り消されたりするケースもある。

 さらにプロフでは、「なりすまし」といういじめも行なわれる。いじめたい相手の本名を使ってプロフを作成し、その子の顔写真を掲載。「私とヤリたい人は連絡してね」といった卑わいなコメントと共に、携帯番号や住所などを書き込む。被害者には1日数十件もの嫌がらせ電話がかかってきたり、不審者に自宅近くを徘徊されたりする場合もある。

 この手のいじめは、仲良しグループの間で発生するケースが目立つ。親しくなったときに教えた個人情報や一緒に撮った写真が、関係にひびが入った途端に悪用されるのだ。いまの子どもによる仲良しグループは、メンバーを順番にいじめのターゲットにすることで、結束を強める傾向がある。「本当は友達をいじめるのは止めたい。でも仲間外れにされるのが怖いから、言い出せない」とB子は打ち明ける。

 仲間と同じように行動しなければならない、というプレッシャーを「同調圧力」という。周りから浮きたくないと思う思春期、子どもたちはこの圧力に押し潰されそうになっている。

渡辺真由子

渡辺真由子

渡辺真由子わたなべまゆこ

メディアジャーナリスト

放送局報道記者として、いじめ自殺を取材したドキュメンタリー「少年調書」で日本民間放送連盟最優秀賞など受賞。その後カナダのメディア分析所に留学し、メディアリテラシーを研究。 ニュース記者としての長年の…

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