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2009年07月24日

人口雑感

 好きな映画にユー・ガット・メールがあります。ひと昔前の映画ですが、DVDでなんとなく見てしまいます。ニューヨークを舞台にメグ・ライアンは母親から譲り受けた小さな書店主で、大金持ちで大規模な書店を経営するトム・ハンクスとのラブコメディのストーリーです。

 この映画を見ると、私はある本屋さんを思い出します。中学から大学に入学したころまでよく通った街の小さな本屋さんです。店主はメグ・ライアンのように本が好きで、本にすごく詳しい老夫婦です。本当に本を愛しておられるという言葉が似合います。話した内容は覚えていないのですが、いつも私たちの相手をしていただいていました。私が大学生になったころ、ご夫婦とも続けて亡くなりました。やがて駅前に大きな本屋さんができて、好きだった本屋さんは映画「ユー・ガット・メール」のように閉店してしまいました。
 今は、メガ書店といわれる大きな本屋さんによく足を運びます。ほとんどの分野が取りそろえられていて、あっという間に時間が経ってしまいます。

 本屋さんに行くといつも買ってしまうのが人口の本。その一つ、講談社学術文庫「人口から読む日本の歴史」(鬼頭宏著)は、「家族周期の重要時点における夫婦の年齢」という表があります。18世紀信濃湯舟沢村、1920年大正期、1990年現代という3つの時代において、「夫婦の結婚時点」、「第一子が出生した時点」、「末子出生時点」、「末子成人」、「学卒時点」、「第一子結婚時点」、「初孫誕生時点」、「夫引退時点」、「夫死亡」、「妻死亡」の年齢を比較したものです。
分析としては、結婚以降に焦点をしぼられており、「出産期間」に関して、江戸時代湯舟沢村は19.7年、1920年は14.5年、現代4.0年になっていて、「出生児数」はそれぞれ5人、5人、2人となっています。また子どもの数にも影響をうけるのでしょうが、「子ども扶養期間」はそれぞれ31.6年、27.0年22.3年となっています。そして、「脱扶養期間」という末子成人から夫死亡までの期間は、それぞれ1.5年、10.5年、32.7年となっているのです。特筆すべき点として、18世紀信濃湯舟沢と1920年大正期は、出生数と家族周期に関して、大きな違いはなく、むしろ現代との違いが非常に大きなものであることがわかります。子どもの数が少なくなり、老後生活が長くなっています。脱扶養期間が30年以上になっているので、子ども扶養期間よりも長いのです。
このデータから、現在、直面している少子化、高齢化という2つの課題が理解しやすくなるのではないでしょうか。

次回は年金についてのコラムです。

井戸美枝

井戸美枝

井戸美枝いどみえ

井戸美枝事務所代表

神戸生まれ。関西大学社会学部卒業。 ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士・キャリアカウンセラーとして、相談、講演、執筆活動を行う。複雑なお金にかかわる動きを、かんたんに読み解く経済エッセイストと…

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