最近よく、仕事で海外の友人に会うと、こんな話をします。
「日本には、”石油”はないけど、”文化”という資源は豊富にあるのよ」と。
このフレーズがけっこう、受けるのです。
かと思うと、海外の友人からは、「日本の文化は素晴らしいけど、そのことを日本人がいちばん知らないなんじゃない? もっと日本人は、自国の文化をプロモートすべきよ!」と、指摘されることが多々あります。
マンガが、寿司が、これほどまでに世界を席巻するとは、いったい誰が想像したことでしょう? また一方で、かつて浮世絵が海外に流出してしまったように、じつはいま世界的に注目を集めている日本の建築家たちによるプロジェクトの「模型」、これらを熱心に収集しているのはじつは海外の美術館であるという事実が発覚しつつあります。
日本人ほど、自国の文化を価値づけ、海外にプロモートしていくことに熱心でない民族も珍しいと、ファッションやアートの領域に関わってきた私はつくづく思うのです。
今回のコラムでは、女性達のライフスタイルにとどまらず、日本という国のファッションやアート分野を「文化」次元で捉えて再考していきたいと思います。
さて、若いアーティストやデザイナーたちにとって、日本ほど巣立ちにくい国はありません。奨学金制度がほとんど整えられていないうえ、「新しい才能」を価値づけるメディアやシステムもこの国にはほとんどなく、才能が自ら飛び立たつことはとても難しいのです。
だからこそ今まで、ファッションの世界ではほとんどの天才的デザイナーたちは、パリ・コレクションで発表し、そこで評価を得ることで世界的な評価を得てきたという経緯がありますし、アートの世界でもほとんどの大物作家は海外の美術館やキュレーターに見出されて初めてその価値づけがなされたという例があります。
権威主義、ということばがありますが、ファッションやアートの世界で「権威主義」の構造がいったん業界を覆い尽くすと、それは未来を失うことを意味します。
日本には、残念ながら、文化の領域に「権威主義」的価値観が根強く残っています。
有名であること、著名であること、権威主義的な背景があることがいったん判断の価値基準となってしまうと、そこで、「新しい才能」を見出すチャンスはすべて失われてしまいます。
「未知なる才能」を「未来の才能」と判断し、価値づけるのには、適切な判断力とある種の勇気が入ります。そのことを判断できる「目利き」のプロが、必要です。
欧米社会には、そうした、才能に富んだキュレーターやプロデューサー、コンサルタントが社会的ポジションを得て、活躍しています。日本でもそうしたプロを育て、価値づける土壌がさらに必要といえるでしょう。
「文化」こそを、日本における最大の資源と考え、その価値を「ブランディング」する。「ジャパン・ブランディング」こそが、21世紀の日本の重要課題だと私は考えています。
伝統文化から現代文化まで、時間軸を横断的に見渡し、懐古趣味的にだけでなく、未来に向けてクリエイティブに文化のヴィジョンを組み立て、世界に発進していく。そんな意味での「ジャパン・ブランディング」は、すでに日本社会のあちこちで芽生えつつあるようですが、これらの動きをつないで、大きなウエーブにしていく時期が今まさに来ているようです。
生駒芳子いこまよしこ
ファッション・ジャーナリスト
VOGUE、ELLEを経て、2004年よりmarie claireの編集長を務める。2008年10月に退任。その後ファッション雑誌の編集長経験を生かして、ラグジュアリー・ファッションからエコライフ、社…
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