ラグジュアリー世界に、大転換期が迫ってきています。
日本におけるブランド・ヒストリーは、「一億層中流社会」と自ら称した時代に、その全盛期が築き上げられました。
クラスが明確な欧米の社会とは異なり、「クラス社会の無い国、日本では、誰もが努力すればブランドものを持てる!」という神話から、70年代から90年代、大ブームが続き、1位、2位を争う売り上げをつねに誇ってきたのです。
これが日本経済の底力を示してきましたが、昨年のリーマンショック以降、状況は一変。ヴェルサーチが日本市場を撤退するニュースが、最近ファッション界に激震を走らせましたが、彼らは中国市場進出の手は緩めていません。これがラグジュアリーブランドのアジア戦略の現状です。
一方、ユニクロの売り上げの大躍進を始め、H&M、ZARA、forever 21などなど、ファストブランドと呼ばれる顔ぶれがいかに盛況かは、彼らのショップフロアーに平日でも人だかりがある様子を見れば一目瞭然です。
消費者のファッションへの価値観の変化は、明らかです。価格優先の目線が行き渡り、そこにクオリティが追いついていく、という現象。この10月1日に発売開始となった、ユニクロとジル・サンダーのコラボシリーズ「+J」は、その典型です。
コートやジャケットが1万円台とやや高めの値段がついていますが、ジルならではのミニマル感覚、シルエットや素材へのこだわりは、商品を手に取ると感じられ、その新しい価格の幅に納得がいく。ファストブランド世界のハイファッション誕生!という印象です。
それでは、ラグジュアリー世界は、今後どうなっていくのか? その新しいステージはどこにあるのか?
この10月に発売予定の、イタリアのブランドTOD’Sがプロデュースした写真集「TOUCH」に、その答えは見える気がします。お城のような家に住むイタリアのハイソサエティの家族を写した写真集ですが、皆が皆、着ているのは何気ない白いシャツにデニム、そして足元はTOD’Sのシューズ、というシンプル&シックなスタイル。
飾り立てるのではなく、ライフスタイルを大切にする、丁寧に生きることがラグジュアリーの本質である、という世界観です。
自分にふさわしいライフスタイルとは、何か? そのヴィジョンを持てば、自ずと必要なものが見えてくる。美しく丁寧に作られたラグジュアリーブランドのバッグや靴もいいし、人道支援や環境保護につながるフェアトレード、オーガニックコットンのドレスやアクセサリーもいい。
選ぶのは「自分自身の価値観」。「これと暮らせば、きっと心が豊かになる!」という価値基準で愛せるものを選んで、丁寧に長く使う。そんなラグジュアリーなライフステージを新たに求める時代が始まっているのです。
こうした市場の変化、社会意識の変化に伴い、ラグジュアリーブランドも今後は、さまざまな点での見直しが迫られているように思えます。
価格とクオリティのバランス、サービスや店舗展開の見直し、さらには、社会貢献や文化支援という観点を盛り込んだ活動で消費者にメッセージを発進するなど、”より社会や消費者に貢献できるブランド”という視点が重要になるのではないでしょうか?
生駒芳子いこまよしこ
ファッション・ジャーナリスト
VOGUE、ELLEを経て、2004年よりmarie claireの編集長を務める。2008年10月に退任。その後ファッション雑誌の編集長経験を生かして、ラグジュアリー・ファッションからエコライフ、社…
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