冷え込んだ時代のまっただ中にいる今、いったい2010年に向けて、私たちは希望を持てるのか?
これは誰にとっても大きな課題です。
そんな折りに改めて思うのは、「いまこそチャンスがある!」というポジティブな解釈です。
既成の価値観がくずれざるを得ないような、さまざまな社会的、経済的、政治的なひずみが、社会全体に行き渡り、いままでのシステムでは突破口が見つからないという行き詰まった状況が、私たちを取り巻いています。
ここから私たちが学ぶべきことは、今、この混沌のときこそ新しいシステムを構築し、実験するのによいチャンスであるということ。
ところで、チャンスとはどこにあるのか?
外からやってくるものでもあるが、チャンスは私たち自身の中にも眠っている。
周囲を見渡す。自分自身を見つめ直す。こんなことから、チャンス発見の手がかりは始まる。
つまり、アンテナを広げつつ、自己探訪をせよ、ということです。
そして、チャンスに出会ったら、どうすればよいか?
人がチャンスに出会ったときに示す行動には、2つのパターンがあります。
慎重派は、「石橋を叩いて渡る」。これが行き過ぎると、「石橋を叩いて壊す」ことになる。
行動派は、「すぐさまチャンスの扉を開く」。これが行き過ぎると、「扉を開きすぎて、パニックに陥る」ことになる。
どちらも行き過ぎはよくないですが、私の体験からいえば、おすすめは後者、「チャンスの扉はとにかく叩いて開こう!」です。
なぜならば、目の前にチャンスの扉が現れても、叩かなければ永遠には開かず、そしてチャンスとの出会いは叶えられないからです。
これを繰り返しているうちに、やがてチャンスは来なくなる。これがチャンスの定理なのです。
なぜ人は「チャンスの扉を開かない」のか?
それは、開けた結果に対して不安を抱いてしまうからです。
ちなみに、私の場合は、不安を乗り越えるだけの好奇心と使命感で、チャンスの扉を叩き続けてここまで来ました。
招かれてもいないパリコレクションに、チケットを工面して無理矢理入った20代の経験が、ファッション・エディターとしての人生を切り開くきっかけとなりました。
ファッション雑誌でアートの記事を取り上げる、という挑戦の扉も早くに叩き続け、このアクションが現在のアートプロデュースの仕事に結びついています。
ヴォーグ創刊の知らせを聞いて自らブックを作り、売り込みに行ったことがきっかけで、それから10年、ヴォーグ、エル、マリ・クレールと、ファッション雑誌の畑を渡り歩きました。
マリ・クレール時代には「社会派の記事を盛り込んだ日本初のファッション雑誌」に挑戦し、現在ではそれが女性誌の大きな流れの一つとなっています。
その経験から、アドバイスを一つ。
チャンスの扉を開くかどうかを決める鍵は、「直感」です。「直感@自分」を信じられるのは、自分自身以外ないのです。
直感は信じれば信じてあげる程、磨かれてきます。開きたいという思う扉を、開けばよいのであって、開きたくなければやめればいい。基準は単純です。
そして、チャンスの扉は適正に開けば開く程、やがてほどなく数多くやってくるのです。
生駒芳子いこまよしこ
ファッション・ジャーナリスト
VOGUE、ELLEを経て、2004年よりmarie claireの編集長を務める。2008年10月に退任。その後ファッション雑誌の編集長経験を生かして、ラグジュアリー・ファッションからエコライフ、社…
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