土曜日の午後、久し振りの休日でTVをつけてみると、はるな愛ちゃんが司会を務める番組で、嫁と姑の変身コーナーが始まっていました。栃木の洋品店で一緒に仕事をしている20代のお嫁さんと50代のお姑さんのW変身ということでしたが、女性のプロデュースばかりしてくると、目がクリッとしたたぬき顔のお嫁さんとホリの深い外人顔のお姑さん、二人とも髪がバッサリ切れる長さというスッピンのビフォーを見れば、ヘア・メークを変えて、衣装を派手にすれば「大成功!」することは予想がつくものです。
変身のための洋服は、普段ベージュやモノトーンという地味な二人に、それぞれアニマルプリントの赤いワンピースと、大きなループ柄がアクセントになったグリーンのワンピース。それも生脚でヒールをあわせるというコーディネートが用意され、完成時の盛り上がりには充分過ぎるくらいの演出がされています。
青山にあるサロンに移動して、女優やタレントを手掛けるプロがトレンドのヘア・メークを施し、いよいよお二人の登場シーンとなり、はるな愛ちゃんを始め、わざわざ上京してきたご主人達も変身した二人の驚くばかりの仕上がりに涙目。ご本人達も「200%満足です」と満面の笑みで感動のエンディングを迎えました。
この企画は人気のコーナーのようですが、実際には普通の暮らしをする女性にとって「大変身」することはTVの中のイベントとして観ることはできても、あんなに極端に変身する人はまず、いません。急激な変化は「怖い」からです。
美容室ではミディアムヘアをボブにする勇気すらなく、スタイルチェンジですら手をつける人が少ないのが現実。ファッションも同様、働く環境や子育ての環境がある中で、ある日突然、ファッションスタイルを変えてしまったら「何かあったのでは?」「どうかしちゃったの?」とコミュニティから浮いてしまうのが怖い。皆と同じように無難に、と思っているのが一般の女性達です。
とはいえ、いつもどこか「変わりたい」と願う女心があるのも事実で、大人の女性でもまつ毛をエクステで5mmだけ長くしてみる、カラコンで目を少しだけ大きく見せる、ブーツにインソールを入れて足を少しでも長く見せるなど、大きく変えられなくても微妙な変化、「これぐらいならいいか」と思える、「見る人が見ればわかる変化」のためにお金を使っているのです。さらに、プリクラ世代以降、スマホのアプリを使いこなして、セルフで可愛い写真を撮っている若い女のコ達は、ほんの少しの変化でも可愛く見せられるテクニックをよく知っています。一見、変わっていないように見える変身こそ、リアルな変身なのです。
中村浩子なかむらひろこ
株式会社ヴィーナスプロジェクト 代表取締役社長
大学在学中より、光文社「JJ」において、ファッション・ライフスタイル担当の特派記者となる。その後、小学館「CanCam」を経て、光文社「VERY」、「姉VERY」、「STORY」の創刊記者を務める。オ…
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