”The Girl from Ipanema”
この曲を初めて聴いたのは大学2年生の夏。広尾にあったリゾートスタイルを提案するセレクトショップで耳にして、「何ておしゃれなんだろう」と引き込まれたことを覚えています。曲とともに気になったのは、ショップオーナー。「本人は30代と言っているけど、本当は40代後半らしい」とか「美大を卒業して、世界を旅しているうちに、バイヤーも始めたらしい」など、どこかミステリアスな雰囲気の大人の男性の情報も、背伸びして、お店に通うきっかけになったように思います。
流行していたルールのあるトラッドファッションに馴染めなかった私は、開放感のあるリゾートファッションとオーナーが旅したブラジルの話に魅かれ、アストラッド・ジルベルトのボサノバを聴きながら同世代の友人より大人になった気分を楽しんでいました。シンプルなタンクトップにマキシ丈のスカート、ストールをさっと巻いて、かごバッグを合わせるスタイルは、あの頃から変わらず好きなコーディネートですが、イメージは飾らない「イパネマの娘」でした。
行きつけだったそのお店はオーナーの海外移住のため無くなってしまいましたが、現在、広尾にあるスタイリストがプロデュースするmiddiというショップで、この季節にぴったりのリゾートファッションが展開されていました。ただし、あの頃と違うのは、ブラジルメイドが立派なブランドに変わっていたということ。
パイナップルやヤシの木がアイコンになっているOSKLENはブラジルのプラダと呼ばれ、セレブからも人気を集めるブランドとして紹介されていました。街を歩く人が何人もはいていたHavaianasのビーチサンダルは、バリエーションがふえブランド認知はますます高まっている様子です。
他にもアクセサリーやバッグなどもブラジルブランドが育つ中、GWは伊勢丹、西武・そごうでもブラジルウィークが開催されていました。いずれも、6月から始まるサッカーワールドカップの開催国をテーマに、消費の盛り上がりを仕掛けているのだと思いますが、これからはファッションにとどまらず、フード、カルチャー、アートまで、見逃せないブラジルブランドに注目していきたいと思います。
中村浩子なかむらひろこ
株式会社ヴィーナスプロジェクト 代表取締役社長
大学在学中より、光文社「JJ」において、ファッション・ライフスタイル担当の特派記者となる。その後、小学館「CanCam」を経て、光文社「VERY」、「姉VERY」、「STORY」の創刊記者を務める。オ…
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