おだやかな

　雨に濡れた街路樹や花々におだやかな美しさを感じる季節、もうすぐ梅雨ですね。
五月のまぶしい陽光がおとなしくなり、曇り空と雨に取って変わる時期は、心静かに過ごせる時間だと考えれば、雨の毎日も楽しめそうです。

　色彩も同じく、春先のキラキラとした明るい色が湿度によって白みを帯び、ソフトな印象の色に変わり、曇り空のくすんだ色調は全体の雰囲気を落ち着かせます。

　穏やかの意味を調べてみても、
①静かでのどかなさま。安らか。
②気持ちが落ち着いていて物静かなさま。　　
③極端でなく、人に受け入れられやすいさま。
と、あります。言葉の意味からも、はっきりとした純色ではなく、柔らかく優しい印象の色が連想できます。具体的には、下表PCCSトーン図のライトグレイッシュ（明るいグレーみの色）やソフト（やわらかい色）にある色です。

（参考資料：日本色研事業株式会社）

　梅雨の曇り空から一滴のグレーを混ぜたようなライトグレイッシュトーンの色は、曖昧さはありますが、柔らかく、おだやかな雰囲気を醸しだします。

　また、日本の伝統色として古くから日常の中に溶け込んでいた色も多く、「わびさび」の歴史から培われた日本的美意識の色でもあります。

　加えて、ライトグレイッシュトーンの色は、肌の色にも近いので、ファッション用語での「抜け感」もあるのです。抜け感とは、崩しすぎないリラックス感を演出すること、ナチュラルな雰囲気の着こなし、適度な肌見せによって装いに遊びをつくる、という意味の言葉です。

　おだやかな印象の色を配色しました。グレーとのコーディネイションは、おだやかさの強調もできますし、また、こなれた印象も作れます。ふんわりした柔らかい色使いは、膨張色でもありますから、グレーのような引き締めカラーをどこかに使うようにしましょう。

　おだやかに見える色の多くは、中間色といわれる純色に灰色を混ぜた色です。この中間色は優れたバランス力のある色で、自他に心理的な調和をもたらします。また、リラックス効果がありますから、頑張りすぎを感じたときに使える色でもあるのです。

　物事のすべてに表と裏があるように、色にもポジティブとネガティブの要素があります。梅雨の長雨を心静かな時間に感じられる日と、憂鬱に感じる日があると思います。あなたがその日に何を感じているかによって、選ぶ色も変わっていくはずです。そして色彩には、その心情を快適な方向へ導いてくれる役割もありますから、色彩からのメッセージに耳を傾けてみてください。

（写真左：

Justin/EaglePress

）　（写真右：Don Arnold/Wireimage）

　ビクトリアズ・シークレットをはじめ、トップブランドのモデルとして、そしてファッショニスタとして、世界中で大人気のミランダ・カー。彼女のファッションスタイルは気負いすぎない抜け感＝おだやかさと、計算し尽くされたシンプルなカラーコーディネイトで、人気なのではないでしょうか。グレイッシュな色も、崩しすぎることなく、地味すぎることのない配色で着こなし、「もしかしたら私にも着こなせるかもしれない」という思いをもたらしてくれるところが、彼女をファッショニスタと知らしめる所以なのかもしれません。

　色彩のチカラでイメージのヴァリエーションを増やして、あなたの毎日を楽しく明るくポジティブに…Color Empowers You！