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2019年07月16日

自分の意見を持つことを意識する

今、教育現場では「アクティブラーニング」という言葉が頻繁に聞かれるようになってきました。「アクティブラーニング」とは、学習者本人が積極的に学習に参加し、理解を深める学習法の総称のこと。これまでの教師が一方的に知識の伝達をする講義形式の受動的な学習法と異なり、グループワークやディスカッション、ディベート、プレゼンテーションなど受け手側が能動的に参加できる方法が取り入れられています。従来型の知識のつめこみではなく、自分で考える力を伸ばし、学んだ知識をどう活かすことができるのか、を重視するものです。

このような講義形式を増やしている背景としては、これまでの受け身の教育だけでは、自分で考える力が育たない、という問題があげられます。どんどん価値観が変化・多様化していく今の時代に、正解は一つでないことは多く、またこれまでの決まったルールでは通用しないことも多々あります。そんな社会背景の中で、問題解決力や未来を切り開く創造力を養うことを目的として注目されています。

私もこの取り組みはかなり重要だと考えています。過去の自分も含めてですが、思っている以上に協調、とか調和を大切にしてきた日本人は、自分の意見を持つことが苦手だな、と感じることが多いからです。これまでの教育や文化で、私たちは親や先生など目上の人に教えられたことを素直に信じ、従い、守る、ということを大切に教育されてきました。一方で教えられたことに疑問を持った時、その疑問を深めて追求し、自分の考えを確立する、という習慣は希薄であった結果のように思います。自分でも気づかないうちに、自分の意見を持とうとしない依存的な習慣があるように、日頃感じることがあるのです。

どういうことかというと、例えば、何か選択に迷った時、家族や友人、上司や教師などに相談したり、アドバイスを求めますよね。それを自分で一度精査する、という作業をせずにそのまま選択することがあります。簡単に言うと、人に決めてもらう、ということです。そういうことが学校や職場、生活場面でもかなり頻繁に、様々な場面で、人に決めてもらっている意識なく、当たり前のようにとりおこなわれています。

実は“人に決めてもらって行動する”という行為を無意識に続けていると、人はそのうち自分が何をしたかったのかわからなくなります。決めてもらってうまくいかなかったら、人のせいにして不満を持っていきます。誰かのせいだと思って生きることはかなりつらいことですし、人のせいにすることに意識が向いてしまって、本来自分がどうすべきだったのか、反省したり、自分に意識を向けて、考えを深めるチャンスも逸してしまいます。うまくいったとしても本当にこんなことしたかったんだっけ?と思う場面がやってきたり、過剰適応につながって自分らしく生きる機会を失ってしまう場合もあるかもしれません。自分の考えを深めて、自分の意見として決断してこなかったツケが回ってきてしまうといった感じでしょうか。

誤解しないでいただきたいのですが、信頼できる人に相談し、アドバイスをもらったり、他人の意見に耳を傾けるという行為はとても大切です。自分だけでは気づくことのできない目線のメッセージが含まれていることが多く、自分がこれは、と心に響く教えを得ることはその人の人生を豊かにしてくれる財産のようなもの。感謝して受けとめ、参考にしていただきたいと思います。ですがその際に、必ず守っていただきたい重要なこと。それは、ちゃんと自分の目指している方向や目的とフィットしているのかを考え、最後は自分の意見として決断していく、ということです。この一度自分で考えて精査し、自分の意見として決定する、という作業があるかないかで、くだした決断は一緒だったとしても、メンタルに与える結果は大きく異なってきます。

そしてこのことを意識していただいた上で、自分で考えて決断し、行動した結果がこうだった、という体験を多く持ってください。なぜならば、もし“人から言われたままに”、ではなく、しっかりと自分で考え、選択した行動であれば、結果は失敗だったとしても、それも含めて、自分の自信になってくるからです。

日ごろから自分の気持ちに気づいたり、知識や考えを深めることを心掛ける→信頼できる人からのアドバイスも有難く受け取る→でも最後はもう一度自分で考えて決める→そして誰のせいにもしない。

それが、自分の人生に責任を持つ、ということにつながり、幸せな気持ちで毎日を過ごせる鍵になるのでは、と私は思っています。

渡邊洋子

渡邊洋子

渡邊洋子わたなべようこ

公認心理師

大学卒業後、株式会社博報堂に入社し、ラジオ局、新聞局で勤務。ラジオ局ではFM局の番組のスポンサー業務を、新聞局では読売新聞担当として新聞広告業務に携わる。その後出産のため退職し、専業主婦を経験。200…

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