若い頃情熱だけはあり未熟だった私は、どうしたらもっと自分を高めることができるのだろうと悩みました。本を読んだり、色々な人の話を聞いたりもしていましたが一番効果があったのはこの人みたいになりたいと思う師を持つことでした。
今思い返してみると私には近づきたいと思うべき師がいつもいたように思います。幼い頃の商人としての祖母や母、三越時代のおもてなしの匠達、ウオルトディズニー、独立してからも高野山のご住職など。私にとって師の存在は軸を整える為の学びであり、みっともないまねはできないと思わせて頂き己を律することに繋がっていました。
日本橋三越に勤務していた時代の販売促進の部長Mさんもそんなお一人でした。
Mさんはとても厳しく私達を鍛えてくれました。当時毎木曜日朝7時~M塾という勉強会があり各担当が画の詰めのプレゼンテーションをやるのですが、まず褒めてくれたことはありませんでした。少しでも詰めが甘いとそこを容赦なく徹底してついてきました。中には涙を滲ませるものもいました。今ではパワハラとして問題になっていたかもしれません。私もボロクソにやられました。何度も悔しい思いをしながらこの企画をブラシュアップしてお客様に喜んで頂けるものにし結果をだそうと執念を燃やしました。
最近このMさんと久々に再会する機会があり「上田お前頑張ってるなあ」と声をかけて下さいました。私は素直に「あの頃Mさんに鍛えて頂いたお蔭です。」とお話ししました。後でFBで繋がり「貴君のご活躍を見て大変嬉しく思いました。貴君のような部下を持てたことは私にとって誇りです」とメッセージを頂戴しました。私はMさんに厳しくされたことが今の私の在り方をつくっているのだと思い、本当の涙を流しました。
人生において、なにくそと踏ん張る時期も大切です。その時は苦しくともその師は実は深い愛情を持って鍛えてくれているのかもしれません。乗り越え年を重ねてきて初めて分かる師のありがたみもあるのです。
上田比呂志うえだひろし
大人の寺子屋 縁かいな代表
大正時代創業の老舗料亭に生まれる。幼い頃より家業を手伝い、"おもてなし"という、日本文化のDNAを受け継いで育つ。1982年に大手デパート・三越に入社。同社の社内研修制度によりフロリダで開催されたウォ…
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