2024年04月25日

専門家（公認心理師・臨床心理士）に相談することの重要性

渡邊洋子

第1回「専門家（公認心理師・臨床心理士）に相談することの重要性」

コロナ禍による急速なリモートワークの普及、業務のDX化やコンプライアンスの強化の情勢を受けて、ここ数年で私たちの暮らしや価値観、社会の仕組みは大きく変化しました。社会の進化に伴う変化はプラスの面も大きいものの、急激な変化については気持ちがついていかないなど、新たなストレスの要因が生まれてしまう側面もあるかと思います。また以前とは異なり、みんなで同じ価値観を持ち同じ目標を目指すというコミュニティから、家族や仲の良い友人であったり、同じ会社に勤めていても、それぞれ異なる多様な価値観やライフスタイルを認めあうというコミュニティへと変化してきています。
それ自体は素晴らしいことですが、自分はどうしたいのか、自分の方向性が見えなくなって、迷ったり悩んだりすることもあるかもしれません。またリアルに会ったり、大勢で集まるという機会も大幅に減り、コミュニケーションの取り方も世代間でかなりギャップが生まれています。
この様な時代だからこそ、小さなストレスも気軽に、身近にいる専門家に相談することは、様々な世代で覚えておいていただきたいストレス対策の一つです。
専門家に相談することのメリットとしては、大きく3つあります。

専門家による相談は、相談した方が今自分がどうしたいのか、何を目指しているのか見えなくなっている時に、専門家の価値観や考えを押しつけるアドバイスではなく、その人が何を求めているのか、どうしたいのか、一緒に考えて、相談者の求めていることを整理していく相談になります。信頼している友人や上司などからアドバイスを受けることは勿論大切ですが、自分がどうしたいのかわからなくなっている時は色んな人の意見を聞くとますます混乱してしまうこともあります。まず自分に起きていることを整理していくことで解決につなげます。
守秘義務が守られます。こんなこと話してしまったけど、誰かに話されてしまうのではないか、等の心配することはありません。自傷他害などの命に係わること以外は、相談した方の許可なく誰かに共有されることはありません。安心して相談して頂けます。
専門家による相談では、基本的に相談した方の問題が解決すれば関係は解消されます。なので友人や同僚に相談した場合と違い、あんな相談をして変な風に思われなかったかな、人間関係の相談をしたけど悪口だと思われたんではないか、など心配する必要もありません。相手にどう思うのか気にすることなく本音で話すことができます。またいくら家族や友人が一生懸命話を聞いてくれるからといって頻繁に同じことを相談していると、知らず知らずのうちに相手に負担をかけでしまう可能性もありますし、相手がそう思っていなくてもこちらが気にしてしまう場合もあります。そうなると、また別の余計な心配が増えてしまいます。専門家による相談では相手は話を聞くプロなので、相談する方もそのあたりの気を遣うことなく、思い切って話すことができます。
コミュニケーションの問題も、友人や知り合いだと問題があっても伝えにくかったり相談した方も指摘されると落ち込んでしまう可能性もありますが、専門家からの指摘であれば受けとめやすくなるかと思います。
環境的にも、最近では学校に所属するスクールカウンセラーだけでなく、職場にも産業医や臨床心理士、公認心理師が所属し、相談業務を実施している企業も多いので、専門家による相談は非常に受けやすくなっています。またお住まいの行政機関でも、心の相談に加え、子育てや家族の相談、ハラスメントの相談、コミュニケーションが苦手な方の相談等、様々な相談をそれぞれの地域によって受付ています。対面での相談だけでなく、電話やメール、チャットなど、相談方法も選べるものが増えてきました。
色々と悩んでいるが病院で相談するほどではない、と考えていらっしゃる方はこのような身近な相談先をうまく利用してみるのも一つではないでしょうか。
注意して頂きたいのは必ず信頼できるところかを確認して頂きたいということです。所属されている学校や勤務先、お住まいの行政機関のものか、料金等（基本的に所属先や行政機関の相談施設なら無料のはずです）確認して頂くことでチェックすることができます。信頼できる機関を見つけて、安心して相談し、その様な機関をうまく利用して頂くことで、心も体も日々健康にお過ごし頂ければと思います。