【今月の経済講師】
今井 澂/国際エコノミスト
1935年、東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、山一證券へ入社。30年間1貫して山一證券経済研究所を中心に、証券アナリスト・ファンド運用・年金営業など情報と市場、資産運用をつなげる業務に従事。山一投資顧問取締役を務めた後に退社し、日債銀顧問へ。退職し、現在は国際エコノミストとして、講演活動等を行っている。
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「同時不況後の世界と日本はどうなる」
つくづくと米国前大統領ブッシュとポールソンは大変な間違いをしたと思う。昨年9月15日のリーマン破綻の容認である。
あの破綻、リーマン・ショックのためにドルを調達できなくなり、世界貿易では輸出入に必要な金融がストップし、ローンで購入する高額商品たとえば自動車が売れなくなった。一種の取り付け騒ぎだから、欧州やアジアの銀行がドルを調達していた米CP市場の急縮小でドルが足りなくなった。貿易比率の高い国、シンガポールやドイツ、また日本が大打撃を受けた。
私はリーマン・ショックの起きる10日ほど前にこの情報を入手し、9月5日の公的年金への講演会で発表、私のサポーターである経営者グループへは「株は総売り」とファックスで連絡した。
ただ理由として「太手証券会社の倒産がクサい」とは述べられなかった。私は山一証券に30年、その後スカウトされた日債銀に8年半在籍したが、両社ともご存知の通り。信用問題で苦労したので騒ぐと影響が大きいーと考えたからである。
そのときに私は「この取り付け騒ぎはあと数ヶ月で、米国政府の非常事態対策によって収まり、2009年4~6月には回復のめどがつく」と予想し、講演で述べた。また私の連載、毎日新聞エコノミスト誌の「今井澂のマネー・ドット・カム・カム」で主張した。3月に株価が反発に向かい私は「夏には日経平均1万円」と述べた。
なあんだ、自慢ばかりか、といわないで頂きたい。私は「100年に一度」とか「大恐慌の再来」という、昨年暮れから誰もが騒いでいたあのお話は信じなかった。だから2月に中経出版から「経済動乱下!定年後の生活を守る方法」を出版した。本は準備に何ヶ月もかかるし年末方年始のひどい状況を見れば、弱気を言ったほうがずっと楽だったろう。でも私は「大騒ぎしすぎ、もうじき事態は好転する」と主張した。私の勝ちだ。
新しい時代が始まる
過去の話は過去の話。これから何が起きるのか、また金融不安の発生源になった米国の住宅不況と、サブプライムによる金融機関の不良債権問題はどうなるのか。
金融危機の残像がまだ記憶に新しいから、まだ不安に思うのは当然だ。また私は米国についてはもう八分とうり大丈夫と思うが、欧州の方が対策は遅れている。こっちの方で騒ぎがあるかも。でもリーマンほどの騒ぎはもう起きないだろう。
詳しくは省略するが3月の米財務省とFRBの異例の決断以来、金融市場は平静を取り戻し、巨額の米財政赤字の資金調達も円滑に行われつつある。また住宅市場も回復に向かいつつある。年末から来年にはいい経済指標が続々と出てくるだろう。
ただし、ここ2、3年間は2007年以前のような世界経済の成長5%台という大好況にはなるまい。あれは米、欧などの先進国とBRICSなど新興国の双発エンジンで快進撃した成果で、当分の間は新興国だけの片肺飛行に止まる。米国だと3%成長の三分の一は金融で稼いでいたからだ。その分、先進国の成長は落ちる。
それじゃあ、今後の世界経済も日本経済も大したことはないか、とがっかりすることはない。それは(1)主にアジアの新興国で、購買力の高い巨大な中間層が急速に増大していること(2)グリーンニューディール(3)高速鉄道など成長要因があり、日本の製造業はツヨい。
紙数の関係で(1)についてだけ説明しておこう。経験的に購買意欲が高く、また現実に買える「中間層」は所得が年間5000ドルから3万5000ドルのこと。これが2000年以降の8年間で5倍近くの7億5000万人になった。携帯、家電、自動車など。この巨大市場が動き出す。
日本については、実はモノいわぬ株価だが、長期の日本経済の成長を予告するサインが出たことに注目している。
日経平均の5年移動平均と10年移動平均は「ゴールデン・クロス」で、実は昨年5月に戦後2回目の長期上昇サインが出た。
第1回目は1949年5月。まだ日本が敗戦後の混乱で貧しかった時代に出たが、100円ぐらいの平均株価は40年間上昇し、1989年に3万9000円近くまで上がった。この間に日本は後進国から米国に次ぐ世界第2の経済大国に。
また40年、はないにしても10年や20年上がる株価のサイン。理由は何だろうか。詳しくは講演会場でお話申し上げたい。
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