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コラム 政治・経済

2013年08月30日

どうなる消費税~法人税引き下げも浮上

世界で2番目に高い日本の法人税負担

 消費税率を予定通り引き上げるかどうかが、日本の政治経済の最大の焦点となってきた。デフレ脱却や景気への影響を重視する立場からは消費増税の先送り、または見直し論が出ているのに対し、財政再建と国際的な影響を重視する立場からは予定通り実施すべきだとの主張がなされ、両者が対立している。
 その中で、法人税減税論も浮上してきた。予定通り実施した場合の景気への影響を軽減する策として、法人税を引き下げる案を検討してはどうかというもので、報道によれば、安倍首相が法人税率の引き下げ検討を指示したという。
 いわば、消費増税とバーターのような形で法人税減税が浮上したような印象だが、本来、消費増税を予定通り実施するかどうかに関わらず、法人税率引き下げは実行すべきものだ。景気への配慮という短期的な観点からだけでなく、日本経済を持続的に成長させるためにも、逆説的だが財政再建のためにも、この際、法人税を思い切って引き下げるべきだと思う。
 日本の法人税の標準税率は現在25.5%で、これに法人事業税などの地方税を合わせた法人実効税率は35.64%(東京都の場合)。これに復興特別法人税(2012~2014年度)を加えると38.01%となる。
 この実効税率は、米国40.75%(カリフォルニア州の場合)に次いで世界で2番目に高い。しかし米国は7月末、オバマ大統領が連邦法人税の税率を現在の35%から28%に、製造業は25%にするという方針を打ち出した。これが議会を通るかどうかはわからないが、実施されれば米国の実効税率は30%台前半となり、このままでは日本が世界で最も突出して法人税の高い国になってしまう。
 ちなみに他の主要国の実効税率は、フランス33.33%、ドイツ29.55%(全独平均)、イギリス23%、中国25%、韓国24.2%(ソウル)、シンガポール17%などとなっている。(別表参照)

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世界は法人税引き下げ競争

 実はいま、世界は法人税の引き下げ競争の様相を呈している。もともと新興国は国内企業の成長を助けるとともに外国企業を誘致しやすくするねらいから法人税率を低く設定しているが、最近は先進国も相次いで引き下げに動いていることが特徴だ。
 すでにドイツは、かつて35~40%もあった法人税率を、2004年に25%に、2008年には現在の水準である15%へと一気に引き下げた。
 イギリスは2008年までは30%だったが、その後はほぼ毎年1~2%ずつ引き下げ、今年4月からは23%となっている。さらに2014年4月に21%、2015年4月には20%にする方針だ。現時点ですでに中国、韓国より低くなっている。先進国の法人税率や実効税率が新興国より低いのは異例の現象だ。
 このままでは、日本は国際的な流れに取り残されかねない。このことは日本企業がますます国際競争で不利な条件に置かれることを意味している。したがって法人税の引き下げは単に景気対策としての効果にとどまらず、日本企業の国際競争力強化と活性化につながるものなのである。つまりアベノミクスの成長戦略の重要な柱となるべきものでもある。

ドイツの先例に学べ

 前述のドイツの例に戻ろう。ドイツが法人税を大幅に引き下げた背景は、1990年の東西ドイツの統一以来、旧東ドイツへのインフラ投資や経済支援などが重荷となって90年代後半から経済が低迷したことだった。そこで法人税引き下げや労働市場改革などに踏み切り、経済活性化を図ったのだ。
 その結果、「強いドイツ」がよみがえった。ドイツが今日、欧州経済危機を支える役割を果たせているのも、2000年代の法人税引き下げを柱とする経済活性化策があったからこそである。
 もう一つ、注目すべきは法人税引き下げによって連邦政府の税収額はむしろ増加するようになったことだ。2012年には過去最高の税収額を記録し、ドイツの財政赤字比率は欧州主要国の中で最も低い水準を保っている。
 このように、法人税の引き下げは経済活性化に大きな効果があり、成長戦略を支えると同時に、財政再建にも結果として貢献する可能性が高いと考えられる。
 なお、ドイツは2007年に付加価値税を16%から19%に引き上げ、イギリスもここ3年間で2段階で付加価値税を引き上げている。「法人税を引き下げ・消費税引き上げ」というのが国際的な流れになっているといえる。
 日本はどうするのか。安倍首相は9月下旬から10月上旬頃に、消費増税の最終決断をすると見られる。消費増税と法人税引き下げ問題をどう決断するのかは、日本経済の行方を大きく左右することになるだろう。アベノミクスはいよいよ正念場にさしかかってきた。

岡田晃

岡田晃

岡田晃おかだあきら

大阪経済大学特別招聘教授

1947年、大阪市生まれ。1971年に慶應義塾大学を卒業後、日本経済新聞社へ入社。記者、編集委員を経て、テレビ東京へ異動し、「ワールドビジネスサテライト」のマーケットキャスター、同プロデューサー、テレ…

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